代襲相続とは|孫・甥姪はどこまで?相続分と相続放棄との違い

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人になるはずだった人が、亡くなった方より先に亡くなっていたときなどに、その人の子が代わりに相続人になることです。たとえば、祖父より先に父が亡くなっていると、祖父の相続では、父の代わりに孫が相続人になります。

代襲相続が起きるかどうかは、主に誰がどの順番で亡くなったかと、亡くなった方との親族関係で決まります。親が相続放棄をした場合には起きません。また、甥・姪の場合は1代限りというように、範囲にも決まりがあります。

この記事では、代襲相続人になる範囲と相続分、相続放棄や数次相続との違い、手続きの前に戸籍で確認することを、家族図を使って説明します。

代襲相続とは|亡くなった順番と親族関係で決まる

代襲相続は、相続人になるはずだった人が、亡くなった方より先に(または同時に)亡くなっていたときなどに起きます。亡くなった方が誰で、その方と先に亡くなった人がどういう関係かを、順番に確かめていきます。

基本の形:祖父より先に父が亡くなっていると、孫が相続人になる

説明のための架空の家族で見てみます。祖父Aが亡くなりました。祖父Aの妻はすでに亡くなっていて、遺言はありません。祖父Aの子は父Bと叔父Eの2人ですが、父Bは祖父Aより前に亡くなっています。父Bには子C・Dがいます。

✏️代襲相続の基本の家族図(例)

祖父A今回亡くなった方祖母すでに死亡父Bの妻相続人ではない父B先に死亡叔父E相続人孫C代わりに相続人孫D代わりに相続人

祖父Aの相続人は、子である叔父Eと、父Bの代わりに相続人になる孫C・Dです(民法887条2項)。このとき、先に亡くなっていた父Bを被代襲者、代わりに相続人になる孫C・Dを代襲相続人と呼びます。父Bの妻(孫C・Dの母)は、祖父Aの相続人にはなりません。

代襲相続が起きる3つの場合

代襲相続が起きるのは、本来の相続人が次のどれかに当てはまる場合です。

本来の相続人の状態 内容
亡くなった方より先に死亡していた 代襲相続の基本となる場合です。同時に亡くなった場合も含みます
相続欠格 亡くなった方を殺害して刑に処せられた、遺言書を偽造・破棄したなど、法律で定めた重大な行為をして、相続人の資格を失った場合(民法891条)
相続廃除 亡くなった方への虐待や重大な侮辱などを理由に、亡くなった方の請求で家庭裁判所が相続人から外した場合(民法892条)

相続欠格や相続廃除で相続人でなくなった人がいても、その人の子は代わりに相続人になります。一方、相続放棄はこの3つに含まれません。放棄した場合の扱いは、後の「親が相続放棄した場合も代襲相続は起きる?」で説明します。

なお、相続廃除ができるのは、遺留分(最低限の取り分)がある相続人に対してだけです。兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹が廃除されることはありません。

祖父と父が同時に亡くなった場合

事故などで、祖父Aと父Bのどちらが先に亡くなったか分からない場合は、同時に亡くなったものと推定されます(民法32条の2)。同時に亡くなった人どうしは互いに相続しませんが、代襲相続は「相続が始まった時以前に」亡くなっていた場合に起きるため、孫C・Dは父Bの代わりに祖父Aの相続人になります。

代襲相続はどこまで?孫と甥・姪で範囲が違う

代襲相続がどこまで続くかは、亡くなった方の子の系統か、兄弟姉妹の系統かで違います。子の系統は孫・ひ孫と下の世代へ続きますが、兄弟姉妹の系統は甥・姪までの1代限りです。

子の系統は、孫・ひ孫と続く(再代襲)

亡くなった方の子が先に亡くなっていて、その子(孫)も先に亡くなっていれば、さらにその子(ひ孫)が相続人になります(民法887条3項)。これを再代襲といいます。子の系統では、亡くなった方の直系の子孫であれば、世代の制限はありません。

兄弟姉妹の系統は、甥・姪までの1代限り

兄弟姉妹が相続人になる場面で、兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥・姪が代わりに相続人になります(民法889条2項)。ただし、甥・姪も先に亡くなっていた場合、甥・姪の子が相続人になることはありません。兄弟姉妹の系統には、再代襲の規定が当てはめられていないためです。

なお、兄弟姉妹が相続人になるのは、亡くなった方の子・孫も、父母・祖父母も、いないか全員が相続放棄をした場合です。詳しくは「兄弟姉妹の相続放棄|期限はいつから?必要書類と甥姪への影響」で説明しています。

⚠️

甥・姪までの1代限りというルールは、1981年(昭和56年)1月1日以降に始まった相続に当てはまります。それより前に亡くなった方の相続が手付かずのまま残っている場合は、当時の法律で相続人を確定する必要があります。

亡くなった親の配偶者や、父母・祖父母には代襲相続はない

代襲相続人になるのは、先に亡くなった人の「子」だけです。先に亡くなった父の妻(自分の母)が、父の代わりに祖父の相続人になることはありません。

また、亡くなった方の父母がすでに亡くなっていて祖父母が相続人になる場合、祖父母は代わりに相続するのではなく、自分自身が相続人として順番が回ってきます(民法889条1項1号)。代襲相続とは別の仕組みです。

先に亡くなった人 代わりに相続人になる人 どこまで
子 孫 ひ孫、玄孫と下の世代へ続く
兄弟姉妹 甥・姪 甥・姪の1代限り
子や兄弟姉妹の配偶者 代襲相続はない —
父母 代襲相続はない(祖父母が自分の順番で相続人になる) —

養子の子は代襲相続人になる?

養子が亡くなった方(養親)より先に亡くなっていた場合、養子の子が代襲相続人になるかは、養子縁組の前に生まれたか、後に生まれたかで変わります。

  • 縁組の後に生まれた子:養親の孫(直系の子孫)にあたるので、代襲相続人になります
  • 縁組の前に生まれていた子:養親との間に親族関係が生じないため、原則として代襲相続人になりません(民法887条2項ただし書、727条)

ただし、縁組の前に生まれていた子でも、養親の実の子との間に生まれた子のように、別の親子関係を通じて養親の孫にあたる場合は、代襲相続人になります。養子が関わる相続は、戸籍で縁組の日と出生の日、親子関係を確かめたうえで判断します。

親が相続放棄した場合も代襲相続は起きる?

起きません。相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます(民法939条)。代襲相続が起きるのは、先に死亡していた場合・相続欠格・相続廃除の3つに限られ、相続放棄は含まれないため、放棄した人の子が代わりに相続人になることはありません。

放棄した場合と、先に亡くなっていた場合の違い

同じ祖父Aの相続でも、父Bが「祖父Aより先に亡くなっていた」のか、「祖父Aの相続を放棄した」のかで、孫C・Dの立場が変わります(説明のための架空の例です)。

✏️先に死亡と相続放棄の違い(祖父Aの相続)

父Bが先に死亡した場合祖父A亡くなった方父B先に死亡叔父E相続人孫C・D代わりに相続人相続人:叔父E、孫C・D父Bが相続放棄した場合祖父A亡くなった方父B相続放棄をした叔父E相続人孫C・D相続人にならない相続人:叔父Eだけ

父Bが放棄した場合、父Bは初めからいなかったものとして扱われるので、祖父Aの相続人は叔父Eだけになります。叔父Eも放棄すれば、祖父Aに子がいない扱いとなり、祖父Aの父母・祖父母、次に兄弟姉妹へと順番が移ります。放棄によって順番が次に移るのは、同じ順位の人が全員放棄したときです。

代襲相続人も借金を引き継ぐ。相続したくなければ自分で放棄する

代襲相続人は、先に亡くなった親が受け取るはずだった立場をそのまま引き継ぎます。そのため、預貯金や不動産だけでなく、亡くなった方の借金も、相続分に応じて引き継ぎます。

借金が多いなど、相続したくない場合は、代襲相続人が自分で家庭裁判所に相続放棄を申述します。期限は、自分が相続人になったと知った時から3か月です(民法915条1項)。孫C・Dのどちらか一人だけが放棄することもでき、放棄した人の子にも相続権は移りません。

疎遠だった祖父母やおじ・おばの相続で、借金があるかどうか分からない場合の調べ方は「亡くなった親の借金を調べる方法」で説明しています。

代襲相続人の相続分は?

代襲相続人の相続分は、先に亡くなった親が受け取るはずだった相続分を、代襲相続人の人数で分けたものです(民法901条1項)。相続人全員の人数で均等に割るわけではありません。

例1:祖父Aに配偶者がいない場合

祖父Aに配偶者はおらず、子は父B(先に死亡)と叔父Eの2人、父Bの子が孫C・Dという家族で考えます(説明のための架空の例です。遺言はなく、相続放棄をした人もいない前提です)。

相続人 相続分 考え方
叔父E 2分の1 子2人(父B・叔父E)で均等に分ける
孫C 4分の1 父Bの2分の1を、孫C・Dの2人で分ける
孫D 4分の1 同上

相続人は3人ですが、3分の1ずつにはなりません。叔父Eの2分の1と、孫C・Dの4分の1ずつを合わせると、ちょうど1になります。

例2:祖父Aに配偶者がいる場合

例1の家族に、祖父Aの妻Wがいる場合です。配偶者と子が相続人のときは、配偶者が2分の1、子全体で2分の1です(民法900条1号)。

相続人 相続分
祖母W(祖父Aの妻) 2分の1
叔父E 4分の1
孫C 8分の1
孫D 8分の1

甥・姪が代襲相続人の場合も同じ考え方

兄弟姉妹が相続人になる場面でも、考え方は同じです(民法901条2項)。たとえば、亡くなった方に配偶者・子・父母・祖父母がおらず、兄弟姉妹は父母が同じ姉Fと兄G(先に死亡)の2人で、兄Gに子が2人いる場合(遺言・相続放棄なし)、姉Fが2分の1、兄Gの子(甥・姪)がそれぞれ4分の1です。父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の系統では、その兄弟姉妹の相続分が半分になり、その子である甥・姪もそれを引き継ぎます。

⚠️

ここで説明した相続分は、法律で決まっている目安(法定相続分)です。遺言があればその内容が優先され、遺言がなければ、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で、法定相続分と違う分け方にすることもできます。

数次相続との違い

代襲相続と間違えやすいのが数次相続です。どちらも「祖父と父が亡くなっている」場面ですが、父が祖父より前に亡くなったか、後に亡くなったかで、どちらになるかが決まります。

✏️亡くなった順番で変わる

代襲相続 数次相続
亡くなった順番 父B → 祖父A 祖父A → 父B(祖父Aの遺産分割が終わる前)
父Bは祖父Aの相続人か 相続人にならない(祖父Aより前に亡くなっている) 相続人になる(祖父Aより後に亡くなっている)
祖父Aの遺産分割に加わる人 叔父E、孫C・D 叔父E、父Bの相続人(父Bの妻、孫C・D)
父Bの妻(孫の母) 加わらない 加わる

数次相続では、父Bは祖父Aより後に亡くなっているので、いったん祖父Aの相続人になります。その後、父Bが亡くなると、父Bが持っていた「祖父Aの遺産を受け取る権利」も、父Bの相続人に引き継がれます。そのため、父Bの妻も、祖父Aの遺産分割の話し合いに加わることになります。

代襲相続か数次相続かで、話し合いに加わる人も、遺産分割協議書の書き方も変わります。祖父と父の死亡日を、戸籍で必ず確かめてください。

🔗

相続人の範囲と順位の全体像は「法定相続人とは?相続順位・割合・範囲を図解で解説」で説明しています。

代襲相続人がいるときの手続き

代襲相続人がいる相続では、相続人を確定するための戸籍が増え、遺産分割の話し合いに加わる人も増えます。手続きを進める前に、次の点を確認します。

戸籍で確認すること

代襲相続人が誰かは、戸籍で確かめます。亡くなった方の戸籍だけでは足りず、先に亡くなった親(被代襲者)の戸籍も必要です。

  • 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍(子が全員分かるようにするため)
  • 先に亡くなった親の出生から死亡までのすべての戸籍(代襲相続人になる子が全員分かるようにするため)
  • 代襲相続人それぞれの現在の戸籍

先に亡くなった親に、前の結婚で生まれた子や認知した子がいれば、その子も代襲相続人です。戸籍で初めて分かることもあるので、家族が把握している範囲だけで判断しないでください。戸籍の取り方は「亡くなった人の戸籍謄本|取り方・必要なもの・除籍謄本との違いを解説」で説明しています。

遺産分割協議には代襲相続人も全員加わる

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。代襲相続人を一人でも除いた協議は成立しません。相続登記や預貯金の払戻しでは、戸籍で相続人全員を確認するため、代襲相続人の署名と押印がない協議書では手続きが進みません。代襲相続人を加えて、協議をやり直すことになります。

代襲相続人が未成年の場合は、親権者(代襲相続人の母や父など)が代わりに協議に加わります。ただし、孫C・Dがともに未成年で、母が2人の親権者として話し合いに加わると、子どうしの利益がぶつかるため、どちらか一方のために家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう必要があります(民法826条2項)。

遺産分割協議書に署名する前に、内容を確認する

おじ・おばなど、ほかの相続人がまとめた遺産分割協議書が届くこともあります。署名と実印での押印をする前に、次の点を確かめてください。

  • 遺産にどのような財産があり、借金があるか
  • 自分の相続分と、協議書で自分が受け取る内容
  • ほかの代襲相続人を含め、相続人全員の名前が入っているか

協議書の内容は、相続人全員が納得して初めて成立します。分からない点があれば、署名の前に説明を求めて構いません。遺産分割協議書の書き方は「遺産分割協議書の書き方|記載事項・必要書類・注意点を解説」で説明しています。

よくある質問

代襲相続した孫にも遺留分はありますか?
あります。代襲相続した孫は、先に亡くなった親が持つはずだった遺留分(最低限の取り分)を引き継ぎます。一方、兄弟姉妹には遺留分がないため、代襲相続した甥・姪にも遺留分はありません(民法1042条1項)。
甥・姪の子は相続人になりますか?
なりません。兄弟姉妹の系統の代襲相続は、甥・姪までの1代限りです。ただし、1980年(昭和55年)12月31日以前に始まった相続では扱いが異なります。
先に亡くなった父の妻(自分の母)は、祖父の相続人になりますか?
代襲相続では、なりません。代わりに相続人になるのは先に亡くなった人の子だけです。ただし、父が祖父より後に亡くなった数次相続の場合は、父の妻も祖父の遺産分割に加わります。
祖父の借金も引き継ぎますか?
引き継ぎます。代襲相続人は、預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金も相続分に応じて引き継ぎます。相続したくない場合は、自分が相続人になったと知った時から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄を申述します。
代襲相続人が未成年のときはどうなりますか?
親権者が代わりに遺産分割協議に加わります。未成年の代襲相続人が2人以上いて、同じ親権者が代わりに話し合いに加わる場合は、子どうしの利益がぶつかるため、家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう必要があります。
代襲相続人を入れずに遺産分割協議をしてしまったら、どうなりますか?
相続人全員で行っていない協議は成立しません。相続登記や預貯金の払戻しでは戸籍で相続人全員を確認するため、その協議書では手続きが進みません。代襲相続人を加えて、協議をやり直すことになります。
養子の子は代襲相続人になれますか?
養子縁組の後に生まれた子はなれます。縁組の前に生まれていた子は、原則としてなれません。ただし、養親の実の子との間に生まれた子のように、別の親子関係を通じて養親の孫にあたる場合は、代襲相続人になります。

代襲相続人がいる相続、相続人の確定から確認します

「自分は代襲相続人なのか」「誰が話し合いに加わるのか」「自分の相続分はどれだけか」は、戸籍で亡くなった順番と親子関係を確かめて初めて分かります。ご相談の際は、家族の関係と、それぞれが亡くなった日、お手元の戸籍や届いた書類をご用意ください。戸籍の収集から相続人の確定、遺産分割協議書の作成、相続登記まで、状況に合わせてお手伝いします。

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