「法定相続情報一覧図を取得してください」——銀行や法務局でこう言われて、聞き慣れない言葉に戸惑っていませんか。法定相続情報一覧図の写しとは、戸籍の束を何度も提出しなくて済むよう、法務局が発行してくれる証明書です。ただし、戸籍を集める手間そのものがなくなるわけではありません。この記事では、法定相続情報一覧図とは何か、必要書類・取得方法・費用や有効期限の目安、自分で作れるかどうかまで、初めての方にもわかりやすく解説します。
法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図の写しとは、亡くなった方(被相続人)と相続人の関係を一枚の図にまとめ、法務局の認証文が付いて交付される証明書です。これを使えば、銀行や法務局などの窓口に、分厚い戸籍の束を何度も提出しなくて済みます。
「法定相続情報証明制度」と「一覧図」の関係
この証明書を交付するしくみを法定相続情報証明制度といいます。申出人が戸籍一式と相続関係の図(一覧図)を作成して法務局に提出すると、登記官が内容を確認したうえで、認証文付きの写しを交付してくれるという制度です。
似た用語が3つ出てくるため、混同しやすいところです。ここで整理しておきましょう。
✏️3つの用語の違い
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 法定相続情報証明制度 | 戸籍の代わりに使える証明書を発行してもらえる、法務局のしくみそのもの |
| 法定相続情報一覧図 | 申出人が作成し、法務局に提出する相続関係の図(申請用の原案) |
| 法定相続情報一覧図の写し | 登記官の認証文が付いて交付される、実際に窓口へ提出する証明書 |
普段の会話では「法定相続情報一覧図」という言葉が、実際に交付される「一覧図の写し」を指して使われることがほとんどです。この記事でも、以降「法定相続情報一覧図」と表記する場合は、交付された「一覧図の写し」を指すものとします。
法定相続情報一覧図を使うメリット
法定相続情報一覧図の一番のメリットは、戸籍の束を何度も提出しなくて済むことです。一度法務局で認証を受ければ、その写しを必要な通数だけ無料で発行してもらえるため、提出先ごとに戸籍一式をコピーしたり返却を待ったりする手間が減ります。
複数の銀行・証券会社・相続登記を並行して進めやすくなる
相続手続きは、銀行口座の解約・証券会社の名義変更・不動産の相続登記など、複数の窓口に同時に書類を提出する必要が出てくることがあります。戸籍の原本は1組しかないため、通常は「A銀行に提出→返却を待つ→B銀行に提出」と順番に進めることになりがちです。法定相続情報一覧図があれば、必要な通数を用意しておくことで、複数の手続きを並行して進めやすくなります。
原本の返却待ちで手続きが止まりにくくなる
戸籍の原本を提出すると、内容の確認後に返却されるまで数日〜数週間かかることがあります。法定相続情報一覧図の写しは、申出の際に必要な通数をまとめて発行してもらえるため、原本の返却待ちで次の手続きに進めない、という事態を減らせます。
戸籍収集そのものが不要になるわけではない
法定相続情報一覧図は、戸籍を集める手間そのものをなくす制度ではありません。あくまで、出生から死亡までの戸籍をすべて集め終えたあとに申し出る制度です。「この一覧図さえあれば戸籍集めをしなくてよい」という考え方は誤りです。
法定相続情報一覧図は、集めた戸籍の内容をもとに法務局が相続関係を証明するものであり、収集そのものを代行・省略してくれるわけではないのです。
戸籍が不足していると申出できない・補正になることがある
法務局は、提出された戸籍が出生から死亡まで途切れなくつながっているかを確認したうえで一覧図を認証します。そのため、戸籍が一部でも不足していると、申出を受け付けてもらえなかったり、追加提出(補正)を求められたりすることがあります。
戸籍の集め方や、除籍謄本・改製原戸籍との違いについては、亡くなった人の戸籍謄本の取り方で詳しく解説しています。まずはこちらで戸籍を漏れなく揃えることが、法定相続情報一覧図の申出をスムーズに進める近道です。
どんな手続きで使える?使えないケースは?
結論から言うと、法定相続情報一覧図は銀行口座の相続手続き・不動産の相続登記・相続税の申告など、戸籍の束の提出が必要な手続きで使えます。ただし、提出先や手続きの内容によっては、一覧図だけでは足りず追加の書類を求められることもあります。
銀行・相続登記・税務署などでの利用場面
代表的な利用場面は次のとおりです。
- 銀行・証券会社での口座解約・名義変更手続き
- 不動産の相続登記(法務局)
- 相続税の申告(税務署)
- 年金等の受給手続きなど、そのほかの相続関連手続き
銀行口座の相続手続きにおける法定相続情報一覧図の使い方は、銀行口座の相続手続きでも具体的に解説しています。
使えない・追加書類が必要になるケース
まず押さえておきたいのは、法定相続情報一覧図が代わりになるのは「戸籍の束」だけだという点です。一覧図には相続人の氏名・続柄・被相続人との関係が記載されますが、誰がどの財産を取得するかという遺産分割の内容までは記載されません。そのため、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑登録証明書、金融機関所定の相続手続依頼書など、一覧図とは別に用意すべき書類は変わらず必要です。
また、法定相続情報一覧図は戸籍・除籍謄本の記載に基づいて法定相続人を明らかにするものです。そのため、相続放棄をして実際には相続人とならない方がいる場合でも、その方の氏名等は一覧図に記載されます。相続放棄の事実そのものは一覧図には反映されないため、放棄した方がいる場合は、別途、相続放棄申述受理証明書などで確認が必要になります。
提出先によっては、一覧図に記載のない情報(相続人の連絡先や本人確認書類など)を別途求められることもあります。「一覧図さえ出せば手続きが完結する」と考えず、提出先ごとに必要書類を確認しておくと安心です。
法定相続情報一覧図の取得に必要な書類
法定相続情報一覧図を取得するには、あらかじめ戸籍一式を揃えたうえで、申出書と一覧図(自分で作成した相続関係の図)を法務局に提出します。基本的な必要書類は次のとおりです。
✏️法定相続情報一覧図の申出に必要な書類
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を含む)
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 法定相続情報一覧図(申出人が作成する相続関係の図)
- 代理人に依頼する場合は委任状
このほか、窓口で一覧図の写しを受け取る場合は、申出人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)の持参が必要です。
戸籍の集め方や、出生から死亡までを途切れなく揃える方法については、亡くなった人の戸籍謄本の取り方で解説しています。
相続関係によっては、ここに挙げた書類だけでは足りず、さらに戸籍の追加提出が必要になることがあります。たとえば、相続人が兄弟姉妹にあたる場合や、代襲相続・数次相続が絡む場合は、被相続人の父母や祖父母の戸籍までさかのぼって提出を求められることがあります。
法務局で取得する流れ
法定相続情報一覧図を取得するまでの大まかな流れは、次の5つのステップです。
戸籍を集める
被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍謄本を揃えます。
一覧図を作成する
集めた戸籍をもとに、被相続人と相続人の関係を示す一覧図を作成します。法務局のホームページに様式・記載例が用意されています。
申出書を準備する
申出書に必要事項を記入し、戸籍一式・住民票の除票を添付します。窓口で受け取る場合は、本人確認書類の提示が必要です。
法務局へ提出する
申出先の法務局は、次のいずれかを管轄する法務局です。①被相続人の本籍地(死亡時の本籍)②被相続人の最後の住所地③申出人の住所地④被相続人名義の不動産の所在地。窓口のほか郵送での申出も可能です。
確認・補正を経て一覧図の写しが交付される
登記官が戸籍と一覧図の内容を確認します。記載に誤りや不足があれば補正を求められることがあり、確認が終わると一覧図の写しが交付されます。
費用・日数・有効期限・再交付の目安
法定相続情報一覧図の写しの交付そのものは、法務局に手数料を払う必要がなく無料です。ただし、事前に集める戸籍の取得費用や、郵送申出の場合の郵送費、専門家に依頼した場合の報酬は別途かかります。
✏️費用の目安
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 一覧図の写しの交付手数料 | 無料 |
| 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の取得費用 | 1通450〜750円程度(通数により変動) |
| 郵送申出の場合の郵送費 | 実費(返信用封筒の切手代など) |
| 司法書士など専門家への報酬 | 依頼する場合のみ発生 |
※2026年7月現在。
日数の目安
交付までにかかる日数は、法務局の混雑状況や、戸籍・記載内容に不備がないかによって変わります。窓口が混んでいたり、補正が必要になったりすると日数は延びるため、余裕をもったスケジュールで申出することをおすすめします。
有効期限と再交付
法定相続情報一覧図の写し自体に、法律上の有効期限が定められているわけではありません。ただし、提出先の金融機関や手続きによっては、「発行から〇か月以内のもの」という独自の基準を設けていることがあります。古い一覧図の写しを使う場合は、提出先に有効な期間を確認しておくと安心です。
また、法定相続情報一覧図は申出日の翌年から起算して5年間、法務局に保存されます。この保存期間内であれば、当初の申出人が再交付を申し出ることができます。
自分で作れる?司法書士に依頼すべきケース
結論から言うと、相続関係がシンプルであれば、法定相続情報一覧図はご自身で作成・申出することも可能です。一覧図の様式や記載例は法務局のホームページで公開されており、案内に沿って作成すれば手続き自体は難しくありません。
一方で、次のようなケースでは、自分で進めるのが難しくなりやすい傾向があります。
- 本籍地を何度も移している(転籍が多い)
- 相続人の数が多い
- 相続人が兄弟姉妹にあたる、または代襲相続・数次相続が絡む
- 相続人の中に海外在住者がいる
- 古い戸籍が手書き・旧字体で読み取りにくい
- 不動産の相続登記もあわせて必要になる
これらに複数あてはまる場合は、戸籍を正確に読み解いたり、一覧図の記載内容を誤りなく作成したりする負担が大きくなります。司法書士は、相続登記などのご依頼の中で、法定相続情報一覧図の作成・申出まで含めて代行することができます。
当事務所では、相続人が50人を超える複雑な相続案件の戸籍収集にも対応してきました。「自分で集めきれるか不安」という段階でも、お気軽にご相談ください。
相続関係説明図との違い
法定相続情報一覧図とよく似た書類に「相続関係説明図」があります。どちらも被相続人と相続人の関係を図にしたものですが、法務局の認証を受けているかどうか、記載される内容が、大きな違いです。
✏️相続関係説明図との違い
| 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図 | |
|---|---|---|
| 法務局の認証 | なし | あり |
| 記載される人 | 数次相続の経路を示すため、すでに死亡している中間の相続人も記載されることがある | 戸除籍に基づく法定相続人を記載(相続放棄は反映されない) |
| 主な用途 | 相続登記の際、戸籍原本の還付を受けるための資料 | 銀行・相続登記・税務署など複数の手続きで戸籍の代わりに使える証明書 |
| 他の手続きでの利用 | 基本的に相続登記の申請時のみ | 金融機関など幅広い提出先で利用可能 |
相続登記だけを行う場合は相続関係説明図で足りることもありますが、銀行手続きなど複数の窓口に同じ内容を提出する必要がある場合は、法定相続情報一覧図のほうが手間を減らせます。どちらが適しているかは、手続きの種類・提出先の取扱い・必要書類によって変わります。
戸籍収集・銀行口座手続き・相続登記とあわせて考える
法定相続情報一覧図は、戸籍をすべて集め終えたあとの提出を楽にしてくれる制度です。逆に言えば、まずは戸籍を漏れなく集めることが出発点になります。銀行口座の解約や不動産の相続登記など、複数の手続きを控えている方ほど、一覧図を取得しておくメリットは大きくなります。
戸籍収集・銀行口座の相続手続きは、それぞれ別の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認いただくと、相続手続き全体の流れがつかみやすくなります。
戸籍が多くて集めきれない、相続人が多い、銀行が複数ある、不動産の相続登記も必要、相続人が遠方・海外にいる——こうした事情がある場合は、戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・相続登記をまとめてご相談いただくことも可能です。
よくある質問
- 法定相続情報一覧図の費用はいくらですか?
- 法務局での一覧図の写しの交付手数料は無料です。ただし、事前に集める戸籍の取得費用(1通450〜750円程度)や、郵送申出の場合の郵送費、専門家に依頼する場合の報酬は別途かかります。
- 法定相続情報一覧図はどこでもらえますか?
- 被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地——このいずれかを管轄する法務局で申出をして交付を受けます。
- 法定相続情報一覧図はどうやって取得するのですか?
- 戸籍を出生から死亡まで集め、一覧図を作成し、申出書とあわせて法務局に提出します。登記官の確認を経て、一覧図の写しが交付されます。
- 法定相続情報一覧図は誰でも取れますか?
- 申出ができるのは、被相続人の相続人にあたる方、またはその代理人です。相続関係がシンプルであればご自身でも申出可能ですが、複雑なケースは司法書士への依頼をおすすめします。
- 法定相続情報一覧図は戸籍の代わりになりますか?
- 銀行口座の解約や相続登記など、戸籍の束の代わりとして使えます。ただし、遺産分割の内容までは証明しないため、遺産分割協議書など別の書類が必要になる場合があります。
- 法定相続情報一覧図は銀行で使えないことがありますか?
- 一覧図は多くの金融機関で利用できますが、すべての金融機関で必ず受け付けられるかまでは確認できていません。提出先によっては独自の様式や追加書類を求められることもあるため、事前に提出先へ確認しておくと安心です。
- 法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?
- 法律上の有効期限は定められていません。ただし、提出先によっては「発行から〇か月以内」という独自の基準を設けていることがあります。なお、一覧図は申出日の翌年から起算して5年間法務局に保存され、その保存期間内であれば、当初の申出人は再交付を申し出ることができます。
- 法定相続情報一覧図は手書きでも大丈夫ですか?
- 手書きで作成しても法務局に受け付けられます。様式・記載例は法務局のホームページで確認できます。
- 相続関係説明図と法定相続情報一覧図は何が違いますか?
- 相続関係説明図は法務局の認証がなく、数次相続の経路を示すためにすでに死亡している中間の相続人が記載されることがあります。法定相続情報一覧図は法務局の認証文が付き、戸除籍に基づく法定相続人が記載され(相続放棄は反映されません)、銀行など複数の手続き先で戸籍の代わりとして使えます。
法定相続情報一覧図の取得・相続手続きでお困りの方へ
戸籍が多くて集めきれない、相続人が多い、銀行が複数ある、不動産の相続登記も必要——そんな場合も大丈夫です。戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・相続登記をまとめてサポートいたします。お電話・メール・LINEでお気軽にご相談ください。遠方の方・ご来所が難しい方にはオンライン相談も承っています。
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