父親が亡くなり相続が開始したときに、異母兄弟がいると、その異母兄弟も相続人になります。また、兄弟が亡くなり兄弟姉妹が相続人になるときも、異母兄弟が相続人になります。
異母兄弟がいることが最初からわかっていることもありますが、相続が開始して戸籍謄本を取ってみて初めて異母兄弟がいることが判明するケースもあります。
異母兄弟とは普段から交流がほとんど無いとか面識すら無いということも珍しくありません。
相続では、異母兄弟とも話をしないと相続手続きが進みませんが、連絡先が分からない、全く面識のない相手にどのように話を持っていけばいいのかわからないなど相続人の方の悩みは尽きず、相続手続きを進める上での障害になりかねません。
ここでは異母兄弟がいる場合の相続手続きの進め方について解説します。
異母兄弟も相続人になるその相続分は
異母兄弟とは、母親が異なる兄弟のことを言います。例えば、父親が再婚していて、先妻と後妻の間にそれぞれ子供がいるような場合があたります。
異母兄弟でも、父親の相続では相続権があります。また、兄弟の相続においても、異母兄弟は相続人になります。同じ親を持つ関係では相続権があるのです。
ただし、異母兄弟が相続人になる場合でも、親の相続なのか兄弟の相続なのかによって相続分が異なります。
一方で、母親が再婚していて父親が異なる兄弟を異父兄弟と言います。異父兄弟の相続について知りたいときは、この記事の「異母兄弟」を「異父兄弟」、「父の相続」を「母の相続」と置き換えて読んでください。
父の相続では異母兄弟の相続分は
父が亡くなり異母兄弟も相続人になるときは、同じ父の子供として子供同士の相続分は同じです。次の図を見てください。
この図で父が亡くなったとき、異母兄弟AとBCの相続分は等しいです。例えば、母が存命であれば、母が2分の1、ABCは各6分の1が相続分になります。また、母が父より先に亡くなっているときは、ABCの相続分は各3分の1になります。
兄弟相続でも異母兄弟の相続分は
兄弟の一人が亡くなり兄弟が相続人になる場合、異母兄弟の相続分は全血の兄弟の2分の1になります。次の図を見てください。
この図でBが亡くなり、Bには子がいないとします。Bの両親もすでに他界しているときは、AとCが法定相続人になります。Aの相続分はCの2分の1になるので、Bに配偶者がいないとき、法定相続分はAが3分の1、Cが3分の2となります。Bに配偶者がいるときは、Bの配偶者が4分の3,Aが12分の1、Cが12分の2が法定相続分になります。
異母兄弟が相続人にいるときの遺産分割の注意点
異母兄弟がいても疎遠だと異母兄弟を除いて相続手続きを進めたくなるかもしれません。
遺言がなくて遺産の分け方を相続人同士で話し合う遺産分割協議をするときは、相続人全員でしなければなりません。相続人の一部を除いてした遺産分割協議は無効です。つまり、異母兄弟を除いて遺産分割協議をすることはできません。
仮に異母兄弟を除いた遺産分割協議書で法務局で相続登記や銀行の相続手続きをしようとしても、その書類では手続きは受け付けてはもらえません。
したがって、異母兄弟がいるときは異母兄弟も含めて遺産分割協議をしなければなりません。
異母兄弟の連絡先を聞いておく
異母兄弟も相続人であるので、相続手続きを進める際には、異母兄弟とも遺産の分け方について話し合いをしたり、書類に印鑑をもらったりと手続きに協力してもらう必要があります。そのため異母兄弟にも連絡しなければなりません。
異母兄弟とスムーズにやり取りするために、もしお父さんが連絡先を知っているようであれば、生前に連絡先だけでも聞いておくとスムーズに連絡できます。
中には、お父さんも先妻の子と全く交流がないということもあります。そのような場合でも、お父さんの兄弟など身内の方が連絡先を知っているケースもありますので、親戚の方に連絡先を知っているかどうか聞いてみるといいでしょう。
また、誰も連絡先を知らない場合でも、日本人であれば戸籍等を調べることで住所を調べることはできます。
しかし、異母兄弟が外国にいるような場合や外国人である場合には、所在を調べる術が無くなってしまいます。実際に、私達の事務所で、異母兄弟がいることは聞いていたが、外国籍でおそらく本国にいると思うが所在が全く分からないとうケースの相談がありました。全く所在が分からない場合は、手続きが煩雑になるので、異母兄弟が外国人という場合には、お父さんの生前に名前や居場所を確認しておくのが良いでしょう。
前妻の子の居場所がわからないときの相続
異母兄弟の連絡先を誰も知らなくても、相続手続きに必要な戸籍謄本を取り、そこから戸籍附票を取ることで、異母兄弟の住所を知ることができます。
ただし、相続手続きに必要でも、傍系の兄弟の戸籍謄本は役所が発行してくれないこともあるので、異母兄弟がいるときの相続手続きは専門家に依頼して手続きを進める方がスムーズにできるかもしれません。
異母兄弟の住所が判明すれば、そこに手紙を出して連絡を取ってみましょう。
異母兄弟とどうやって話し合いをしますか?
先程も述べましたが、異母兄弟も法定相続人であることに変わりないので、異母兄弟も含めて全員で遺産分割の話し合いをしなければなりません。
先妻の子にとっては、父母の離婚の経緯やその後の生活状況によっては、複雑な感情を抱いている可能性もあり、先妻の子としても言いたいことが様々あるかもしれません。
このようなことを考えると、父の先妻の子と全く交流がなかった場合、相続に関して手紙を書いて話し合いを始めるのも難しいと感じるのではないでしょうか。
実際に、異母兄弟にも法定相続分で相続することには異存はないけど、交流が全く無かった異母兄弟と直接話しをしたくないので、代わりに連絡をとってもらえないかという相談が寄せられることがあります。
異母兄弟と話し合いをしにくなと思われたら専門家に依頼するのもスムーズに相続手続きを進めるためには必要なことかもしれません。
異母兄弟がいる場合には遺言書を作成してもらう
異母兄弟がいることがわかっていて、遺産分割の話し合いをしたくないときは、父に遺言書を作成してもらうのがいいでしょう。
遺言書で財産をどう承継させるのかを書いておく
父に遺言書を書いてもらう際に気をつけることは、どの財産を誰が相続するのかが明確になるように書いてもらうことです。これがあやふやな内容だと、遺言書があっても相続人間で話し合いが必要になることがあります。
遺言書を作成するのは公正証書で作成するのが確実ですし、司法書士などの専門家に相談しながら後に揉めないような遺言書を作成すると良いでしょう。
遺言書で遺言執行者を指定しておく
父に遺言書を作成してもらう際には、司法書士などの専門家を遺言執行者を指定してもらうと良いでしょう。
遺言執行者は、相続人の代わりに異母兄弟に連絡したり遺産を分配したりといった手続きを全て行ってくれます。
遺言作成を相談する専門家に遺言執行者も引き受けてもらうと、異母兄弟に遺言作成時の父の考えも説明してもらえるでしょう。
異母兄弟の相続の例
当事務所も異母兄弟がいる相続手続きを扱ってきました。いくつか事例を紹介しましょう。
戸籍を取ったら異母兄弟がいた事例
父の生前に異母兄弟がいることは聞かされてなく、相続人は自分一人だけと思って相続のために戸籍謄本を収集したところ、異母兄弟がいることが判明しました。傍系になる兄弟の戸籍謄本は発行してもらえなかったことと、異母兄弟と直接相続の話し合いをするのが嫌だということで、当事務所に相談がありました。
当事務所で戸籍謄本を収集し、異母兄弟に手紙を出して連絡しました。相談者の方には遺産の分け方についての希望がありましたが、異母兄弟の方もそれに意義を述べることもなく、相続手続きは順調に進みました。
異母兄弟が相続放棄をした事例
全く交流のない異母兄弟がいるけど、自分たちで連絡したくないということで相談に来られました。
当事務所から異母兄弟に連絡したところ、離婚後母も苦労したので感情的にはいろいろあるものの、相続についてはそちらの家族だけですればいいと思うので放棄しますと行って、家庭裁判所で相続放棄をされました。
結果として、異母兄弟は相続人にはならず、異母兄弟を除いた形で相続手続きができました。
まとめ
相続で異母兄弟がいるときは、異母兄弟も相続人になります。遺産分割の話し合いをするときは、異母兄弟を除いてはできません。
しかし、戸籍を見て異母兄弟がいることを初めて知ったような場合や異母兄弟がいることは知っていても全く付き合いがなかったような場合には、相続で異母兄弟に連絡をすることは、ちょっとためらわれるのではないでしょうか。
そのようなときは、神戸相続遺言手続きサポートを運営する司法書士事務所神戸リーガルパートナーズに相談してください。
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