相続手続き

遺産相続手続きで印鑑証明を渡したくない渡しても大丈夫

遺産相続の手続きをしているときに、実印を押して印鑑証明書を付けてくださいと求められることがあります。

印鑑証明書を渡す相手が、普段から付き合いがあるよく知っている相続人であればそれほど抵抗はないかもしれませんが、ほとんど付き合いのない相続人であったり、いきなり専門家から連絡があって印鑑証明書を求められたりすると抵抗を感じて「渡したくない」と思うかもしれません。

この記事では、印鑑証明書が必要な相続手続きと印鑑証明書を渡さないとどうなるかについて説明します。

実印と印鑑証明書とは何か

実印とは、住んでいる市区町村に印影を登録した印鑑のことです。はんこ屋さんで作る立派な印影の印鑑が実印だと思われるかもしれませんが、そうではありません。はんこ屋さんにあるできあいの印鑑であっても、それを印鑑登録すればそれがその人の実印ということになります。

印鑑証明書(正式には「印鑑登録証明書」)は、印鑑登録をした市区町村から発行される書類で、登録した印鑑の印影、住所、氏名、生年月日などが載っています。

印鑑証明書によって、その印影の印鑑(実印)がその人の印鑑であることが証明できます。

実印と印鑑証明書を使う場面

実印と印鑑証明書は、本人が自らの意思で手続きに関与していることを確認するため、相続手続き以外でも不動産の売買などさまざまな場面で求められます。

以前、実印と印鑑証明書をお願いしたところ、その方の署名の横にご主人の実印を押して、ご主人の印鑑証明書添付された方がありました。ご本人がその意思で手続きをしていることを証明するために実印と印鑑証明書が必要なので、ご主人のものとはいえ他の人の印鑑を使ったのでは、その書類は使えません。むしろ、ご主人からすると、奥様に実印と印鑑証明書を悪用されてしまう危険性もあります。

実印と印鑑証明書が使われる理由

実印が本人の印鑑であることを証明するのが印鑑登録証明書です。印鑑登録証明書は印鑑登録カードを持っている人しか取得できず、一般に実印や印鑑登録カードはしっかりと本人が保管していることから、実印が押された書類に印鑑登録証明書が添付されていれば、本人がそれを作成したことの証明になります。

法律的には、文書に本人の印鑑による押印があるときは、本人の意思に基づいたものであると推定され、さらに、本人の意思に基づく押印が文書にされているならば、その文書が本人の意志に基づいて真正に成立したと推定されます。

実印と印鑑証明書(印鑑登録カード)は安易に渡してはいけない

以上のように、実印が押さされている書類は、本人の意志に基づいて真正に成立したと推定されます。これを否定する場合は、否定する側が違うことを立証しないといけません。例えば、実印を勝手に使われたとか、印鑑を悪用されたなど。しかし、これを裁判で主張立証するのは、とても大変なことです。

このようなことにならないためには、実印と印鑑証明書は安易に渡すことはしないで、きちんと文書の内容を確認してから自分で押すようにしなければなりません。

相続で印鑑証明書が必要になる手続き

遺産相続の手続きは、本人が自らの意思で手続きに関与していることを確認するため、さまざまな場面で実印と印鑑証明書が求められます。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合って、その結果を書いたものです。

法律的には、遺産分割の話し合いがまとまったからといって遺産分割協議書を作らなければならないということはありませんし、遺産分割協議書を作ってもそれに実印を押したり印鑑証明書を付けたりすることは求められていません。

しかし、遺産分割協議後に相続登記や金融機関での相続手続きの際に、実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書の提出が求められるため、遺産分割協議書を作成し、それに実印を押し、印鑑証明書を付けることになります。

銀行・証券会社の相続手続き

銀行や証券会社の相続手続きでは印鑑証明書が求められます。

一般的には、相続人が一人であったり、家庭裁判所の調停・審判や遺言書で相続する人が決まっているときは、その人の印鑑証明書を、それ以外の場合には相続人全員の印鑑証明書を提出します。

ただし、銀行や証券会社によって取り扱いは異なるので、手続きをする金融機関に確認する必要があります。

相続登記

相続登記の申請で印鑑証明書が求められているわけではありません。法定相続分で相続登記を申請する場合、遺言に基づいて相続登記をする場合、家庭裁判所の調書や審判に基づいて相続登記をする場合には、印鑑証明書は必要ありません。

遺産分割協議書に基づいて相続登記の申請をするときは、遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書を添付することが求められます。

相続税の申告

相続税の申告をする際も、遺産分割協議書を提出するときは、遺産分割協議書に押した印鑑の印鑑証明書の提出が求められます。

相続手続きで書類に実印を押して印鑑証明書を渡して大丈夫か

相続手続きでは、さまざまな場面で書類に実印を押して印鑑証明書を添付することを求められます。それはこれまで説明してきたように、遺産分割協議書を相続手続きに提出するときや、金融機関の手続きをするときです。

相続人同士親しい間柄でお互いに信頼関係があるときは、書類に実印を押したり印鑑証明書を渡すことにそれほど抵抗はないかもしれません。

しかし、信用していた身内に実印と印鑑証明書を預けていたら勝手に使われたようなのだがどうしたらいいかという相談がないわけではありません。そして、その話をよくよく聞いて書類を確認してみると、自分で署名したことは間違いなく、どうやらあまり書類の中身を意識しないまま署名して実印を押して印鑑証明書を渡してしまっていたようなこともあります。実印を押して印鑑証明書を渡すときは、それが親しい信用できる間柄でも、どのような書類に実印を押しているのか書類の内容をよく確認してからにしなければなりません。

印鑑証明書を渡すのを拒んだらどうなるのか

では、印鑑証明書を渡すのを拒否したらどうなるでしょうか?

先にも述べたとおり相続手続きでは印鑑証明書を提出しなければならない場面が多数あります。つまり印鑑証明書を提出しなければ手続きが進みません。ということは、印鑑証明書を提出しないでいるとあなたが相続する分もいつまで経っても受け取ることができないことになります。

また、印鑑証明書を提出しないで相続人のうちあなただけが相続税の申告ができない場合、あなたの分だけ無申告加算税や延滞税など本来払わなくて済んだペナルティを受けることになるかもしれません。

さらには、他の相続人から遺産分割調停やその他裁判手続きを起こされる可能性もあります。

相続手続きで印鑑証明書を渡さない相続人がいるときどうする

相続手続きで印鑑証明書を渡してくれない相続人がいるとき

  • そもそも遺産分割の内容に納得していない
  • 印鑑証明書をあなたに渡したくない

という理由が考えられます

そもそも遺産分割の内容に納得していなくて印鑑証明書を渡したくない

遺産分割の内容に納得していなくて印鑑証明書を渡さないというとき、それは遺産分割協議がまとまっているとはいえないので、遺産分割協議をきちんとする必要があるでしょう。

納得してない理由にもよりますが、専門家が入って説明することで納得してもらえることも多いと思いますが、場合によっては弁護士に依頼して交渉してもらったり、家庭裁判所で遺産分割調停をする必要があるかもしれません。

印鑑証明書を渡したくないだけのとき

相続人同士が疎遠で、あまり親しくない場合、遺産分割の内容には納得できても、親しくない(信用できるかどうかわからない)人に言われて実印を押したり、印鑑証明書を渡したりしたくないということもあります。

こういう場合は、司法書士など第三者に依頼して手続きを進めてもらい、司法書士の書類に実印を押し、印鑑証明書も司法書士に渡すようにすることで抵抗も少なくなると思われます。

相続人同士が疎遠だったり、知らない相続人が出てきたときは、司法書士などの専門家に遺産整理を依頼する方が相続人の負担も少なく、手続きもスムーズに進むでしょう。

まとめ

遺産相続手続きでは、遺産分割協議、相続登記、金融機関での相続手続きなどさまざまな場面で書類の実印を押して印鑑証明書を添付することを求められます。

印鑑証明書を渡さなければ手続きを進めることができないので、受け取れる遺産もいつまでも受け取れないことになってしまいます。また、調停などの裁判手続きをとらざるを得なくなると、無駄な費用と時間がかかってしまいます。

だからといって、何でも印鑑を押せばいいというものではなく、署名して実印を押すときはどのような内容の書類なのかを確認をまずしなければなりません。

相続人同士が親しい信頼し会える間柄でしたら、書類の内容が確認できれば実印を押して印鑑証明書を渡すことには抵抗がないかもしれません。

しかし、相続人と疎遠だったり、そもそも会ったこともない間柄だと、書類に実印を押したり印鑑証明書を渡したりしても大丈夫だろうかと不安に感じることもあるかもしれません。そのようなときは、専門家を間に入れて相続手続きを進める方がスムーズかもしれません

司法書士事務所神戸リーガルパートナーズはこれまでも会ったこともない兄弟の相続など複雑な相続関係の相続手続きを多数経験してきました。相続でお困りのことは司法書士事務所神戸リーガルパートナーズにご相談ください。

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