相続手続き

所有不動産記録証明制度とは?相続で親の不動産を調べる方法

2024年4月から相続登記が義務になり、不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に名義変更(相続登記)をしなければならなくなりました。相続する不動産は実家だけとは限らず、田舎の土地や山林、昔購入した別荘、誰かと共有している土地などが、あとから見つかることもあります。固定資産税の納税通知書を見ても、「これで全部そろっているのか」と不安に感じている方も多いはずです。

そこで役立つのが、2026年2月から始まった所有不動産記録証明制度です。この記事では、制度の仕組みや相続での使いどころ、請求できる人・必要書類・費用、名寄帳や登記事項証明書との違い、そして「これだけで漏れなく分かるのか」という限界まで、相続に初めて向き合う方にもわかるようにやさしく解説します。相続登記の前に、どの不動産を調べればよいのかが見えてきます。

所有不動産記録証明制度とは?

所有不動産記録証明制度とは、ある人が名義人として登記されている全国の不動産を、法務局がまとめて一覧にし、証明書として発行してくれる制度です。自分名義の不動産はもちろん、亡くなった親など被相続人名義の不動産についても、相続人が請求できます。「親の不動産が実家のほかにもあるかもしれない」というとき、その洗い出しに役立ちます。

2026年2月から始まった新しい制度

この制度は、2026年(令和8年)2月2日から始まりました。法務局の登記官が発行する証明書は所有不動産記録証明書と呼ばれます。不動産登記法第119条の2

これまで、不動産の登記情報は一つひとつの土地・建物ごとに調べる仕組みで、「ある人が全国にどれだけ不動産を持っているか」をまとめて確認する方法はありませんでした。そのため、相続の場面では、亡くなった方の不動産を家族が把握しきれず、一部が名義変更されないまま放置される、というケースが起きていました。所有不動産記録証明制度は、こうした登記記録を名義人ごとに横断して一覧化できるようにした、新しい仕組みです。

なぜこの制度ができたのか

背景には、持ち主が分からない「所有者不明土地」が全国で増えている問題があります。その対策の一つとして、2024年4月から相続登記(相続した不動産の名義変更)が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に登記することが必要になりました。

ただ、名義変更を義務づけても、相続人が「どの不動産を相続したのか」を把握できなければ手続きは進みません。そこで、相続人が被相続人名義の不動産を調べやすくし、登記漏れを防ぐために設けられたのが、この所有不動産記録証明制度です。相続登記の義務化と一体で、所有者不明土地を生まないための仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。

相続でどんなときに役立つ?

相続では、亡くなった方がどこにどんな不動産を持っていたか分からないときに、この制度が役立ちます。心当たりのある不動産だけで手続きを進めてしまうと、あとから別の土地が見つかり、相続登記や遺産分割をやり直すことになりかねません。次のような場面では、所有不動産記録証明制度で名義人ごとの不動産を一覧的に確認しておくと安心です。

  • 親が不動産を持っていたかどうか、はっきり分からない
  • 実家は把握しているが、田舎の土地や山林、別荘などが他にもありそう
  • 遠方の不動産や、誰かと共有している持分があるかもしれない
  • 相続登記の前に、名義変更が必要な不動産を漏れなく洗い出したい

相続した不動産を確認する手がかりとして、多くの方はまず毎年届く固定資産税の納税通知書を見ます。ただ、この通知書だけでは確認しきれない不動産もあります。

⚠️

固定資産税の納税通知書には、非課税の土地(一定の私道など)は載っていません。また、通知書は不動産のある市区町村ごとに届くため、複数の地域に不動産がある場合は、通知書自体の集め漏れにも注意が必要です。

所有不動産記録証明制度は、こうした「通知書だけでは見えにくい不動産」も含めて、登記記録をもとに名義人単位で確認できる点に強みがあります。

誰が請求できる?必要書類と費用

請求できるのは、その不動産の登記名義人本人と、その相続人などです。相続の場面では、亡くなった親名義の不動産について、子などの相続人が請求できます。司法書士などの代理人に手続きを依頼することもできます。

請求できる人

所有不動産記録証明書を請求できるのは、次のいずれかにあたる方です。会社などの法人も対象になります。

  • 不動産の登記名義人本人(自分名義の不動産を確認したいとき)
  • 登記名義人の相続人その他の一般承継人(亡くなった方名義の不動産を確認したいとき)
  • 上記の方から依頼を受けた代理人(司法書士など)

相続で親などの不動産を調べたい場合は、2つ目の「相続人」にあたるため請求できます。なお、この制度で確認できるのは登記名義人ごとの不動産です。相続人であっても、被相続人以外の第三者の不動産を自由に調べられる制度ではありません。

相続人が請求するときの必要書類

相続人が請求するときは、亡くなった方が死亡したことと、請求する人がその相続人であることが分かる戸籍関係の書類が基本になります。あわせて、請求する方の本人確認書類なども必要です。

すでに法定相続情報一覧図を作成して番号(法定相続情報番号)を持っている場合や、戸籍電子証明書提供用識別符号を取得している場合は、その情報を伝えることで戸籍などの書類提出を省略できます。相続手続き全体で戸籍を何度も集め直す手間を減らせるため、こうした番号を先に取得しておくとスムーズです。

⚠️

必要書類は、亡くなった方と請求する方の関係や、遺言の有無などによって変わることがあります。ご自身のケースで何を用意すればよいか分からないときは、戸籍収集から相続登記までまとめて司法書士に相談すると確実です。

手数料・申請方法(窓口・郵送・オンライン)

所有不動産記録証明書は、全国どの法務局(登記所)でも請求できます。窓口・郵送のほか、オンラインでの請求にも対応しています。手数料は請求・受取の方法によって次のように異なります(2026年時点)。

✏️所有不動産記録証明書の手数料

請求・受取の方法 手数料(1通あたり)
窓口で請求し、書面で受け取る 1,600円
オンラインで請求し、郵送で受け取る 1,500円
オンラインで請求し、窓口で受け取る 1,470円

手数料は「検索する条件(氏名と住所の組み合わせ)1件につき1通ごと」にかかります。1つの住所で見つかった不動産は、まとめて1通の証明書に載ります。ただし、亡くなった方が引っ越しをしていて登記上の住所が古いまま変わっていない不動産は、現在の住所だけで検索しても出てこないことがあります。その場合は過去の住所も条件に加えて検索する必要があり、条件を増やした分だけ手数料もかかります(この点は後の「注意点・デメリット」でくわしく説明します)。なお、請求してから証明書が交付されるまでの日数は、請求先の登記所や混雑の状況によって異なり、制度が始まったばかりの時期は2週間程度かかる場合もあります。

名寄帳・登記事項証明書・固定資産税通知との違い

相続で不動産を調べる方法には、所有不動産記録証明制度のほかにも、名寄帳(なよせちょう)や固定資産税の納税通知書、登記事項証明書があります。それぞれ「どこが発行し、どこまで調べられるか」が異なります。まずは下の表で全体像をつかんでください。

✏️相続で不動産を調べる資料・制度の違い

資料・制度 発行元 調べられる範囲 相続での使いどころ
所有不動産記録証明制度 法務局 全国(登記記録をもとに名義人単位で一覧化) 名義人ごとに全国の不動産をまとめて確認できる。ただし住所変更が未了の不動産などは漏れる場合がある
名寄帳 市区町村 その市区町村の中だけ その自治体にある不動産を課税・非課税まとめて確認できる。複数の市区町村にあると、それぞれで取り寄せが必要
固定資産税の納税通知書 市区町村 その市区町村の課税対象のみ 毎年届くので手元で確認できる。非課税の土地(私道など)は載らない
登記事項証明書 法務局 1つの不動産ごと その不動産の所有者や抵当権など、権利関係をくわしく確認できる。全体の洗い出しには向かない

ポイントは役割分担です。所有不動産記録証明制度で「どこにどんな不動産があるか」をおおまかに洗い出し、そのうえで気になる不動産について登記事項証明書で「誰の名義で、どんな権利がついているか」を確認する、という使い方が基本になります。名寄帳や固定資産税の納税通知書は、その市区町村に絞った確認に役立ちます。これらを組み合わせることで、相続する不動産の見落としを減らせます。

知っておきたい注意点・デメリット

所有不動産記録証明制度は便利な制度ですが、これ1つで全国の不動産を完全に漏れなく把握できるわけではありません。相続で使うときは、次のような限界を知っておくことが大切です。

引っ越しで住所が変わっている不動産は漏れることがある

もっとも注意したいのが、住所の問題です。この制度は、登記簿に記録されている名義人の「氏名」と「住所」をもとに不動産を検索します。そのため、亡くなった方が過去に引っ越したのに住所変更の登記をしていなかった不動産は、現在の住所で検索しても出てこないことがあります。登記簿には昔の住所が残ったままになっているためです。

⚠️注意

たとえば、親が若いころにA市で土地を買い、その後B市へ引っ越したまま登記上の住所を変えていなかった場合、いまのB市の住所で検索しても、A市の土地は証明書に載らないことがあります。「制度を使ったのに、あとから別の土地が見つかった」という事態は、この住所のズレが原因で起こります。

この漏れを防ぐには、確認できる範囲で過去の住所も検索条件に加えることが大切です。そのためには、亡くなった方が昔どこに住んでいたかを、住民票の除票や戸籍の附票、古い納税通知書、名寄帳などから確認します。ただし、これらの資料の保存状況や、転籍・転居の回数などによっては、住所の変遷をすべて確認できないこともあります。だからこそ、名寄帳や登記事項証明書ともあわせて確認することが大切です。こうした住所の確認から証明書の請求までは、相続に慣れていないと負担が大きい部分のため、司法書士がまとめて代行できます。

その他に気をつけたいこと

住所の問題以外にも、次のような点に注意が必要です。

  • 古い登記簿の一部は対象外:コンピュータで管理されていない古い登記記録は検索できないことがあります。
  • 未登記の建物は載らない:登記されていない建物(登記簿がない建物)は、この制度では確認できません。
  • 評価額や相続税評価は分からない:この証明書で分かるのは「どの不動産があるか」で、価値(評価額)までは分かりません。評価額は固定資産評価証明書などで別に確認し、相続税の判断は税理士に相談してください。

所有不動産記録証明制度は「不動産のおおまかな洗い出し」に強い一方で、住所のズレや未登記などで漏れが出ることもあります。名寄帳や登記事項証明書とあわせて確認し、確認できる範囲で住所の変遷もたどることで、見落としを減らせます。

制度を使った後にやること

所有不動産記録証明書で不動産を洗い出せたら、そこがゴールではありません。相続登記(名義変更)まで進めて、はじめて相続の手続きは完了します。証明書を取ってから相続登記までの流れは、次のとおりです。

✏️証明書を取ってから相続登記までの流れ

1

証明書の内容を確認する

一覧に出た不動産について、登記事項証明書で所有者や権利関係をくわしく確認します。住所のズレなどで漏れがないかも点検します。

2

相続人を確定する

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、誰が相続人になるかを確定します。

3

遺産分割協議をする

相続人全員で、どの不動産を誰が引き継ぐかを話し合い、遺産分割協議書にまとめます。

4

相続登記をする

不動産の名義を相続人へ変更します。相続登記は、取得を知った日から原則3年以内が期限です。

5

その後の方針を決める

引き継いだ不動産を、活用する・売却する・手放すなど、今後の方針を検討します。

洗い出した不動産の中に、使う予定のない遠方の土地や山林が含まれていることもあります。その場合は、相続した不動産の売却や、一定の要件を満たせば土地を国に引き取ってもらえる相続土地国庫帰属制度といった選択肢もあります。まずは相続登記で名義を整えたうえで、落ち着いて今後を検討するとよいでしょう。

司法書士に相談できること

ここまで見てきたように、所有不動産記録証明制度は便利な一方で、住所のズレや古い登記などで漏れが出ることもあり、証明書を取るだけで相続が終わるわけではありません。相続する不動産をきちんと洗い出し、名義変更まで進めるには、次のような作業をまとめて行う必要があります。司法書士は、これらを一括してお引き受けできます。

  • 亡くなった方の住所の変遷を確認できる範囲で調べ、過去の住所も含めて所有不動産記録証明書を請求すること
  • 登記事項証明書や相続財産の調査による、不動産の見落としの点検
  • 戸籍を集めて相続人を確定すること
  • 遺産分割協議書の作成と、相続登記(名義変更)
  • 不動産だけでなく、預貯金・株式などを含めた遺産整理全般

「親の不動産がどこにあるか分からない」「制度を使ってみたが、これで漏れがないか不安」という段階からでもご相談いただけます。特に、住所が変わっている不動産や、遠方・共有の土地が関わるケースは、早めに専門家に相談することで、あとからの手戻りを防げます。

よくある質問

所有不動産記録証明制度はいつから始まりましたか?
2026年(令和8年)2月2日から始まりました。相続登記の義務化など、所有者不明土地をなくすための一連の制度改正の一つです。
どこで、どうやって請求できますか?
全国どの法務局(登記所)でも請求できます。窓口・郵送のほか、オンラインでの請求にも対応しています。
相続人でも請求できますか?必要書類は何ですか?
亡くなった方の相続人であれば請求できます。ご自身が相続人であることが分かる戸籍関係の書類などが必要です。法定相続情報番号などをお持ちの場合は、戸籍の提出を省略できることがあります。
費用はいくらかかりますか?
手数料は検索する条件(氏名と住所の組み合わせ)1件につき1通ごとにかかります。窓口で書面請求する場合は1通1,600円、オンライン請求で郵送受取は1,500円、オンライン請求で窓口受取は1,470円です(2026年時点)。
名寄帳と何が違いますか?
名寄帳はその市区町村内の不動産だけを確認できるものです。所有不動産記録証明制度は、登記記録をもとに全国の不動産を名義人ごとに一覧的に確認できる点が違います。
未登記の建物や、不動産の評価額も分かりますか?
登記されていない建物は、この制度では確認できません。また、分かるのは「どの不動産があるか」で、評価額までは分かりません。評価額は固定資産評価証明書などで別に確認します。
この証明書だけで相続登記はできますか?
できません。証明書は不動産を洗い出すためのものです。名義変更(相続登記)には、別途、戸籍の収集や遺産分割協議、登記申請の手続きが必要です。

まとめ

所有不動産記録証明制度は、2026年2月に始まった、亡くなった方名義の不動産を全国的に洗い出せる新しい制度です。相続登記の前に不動産の見落としを防ぐうえで、心強い仕組みです。ただし、引っ越しで住所が変わっている不動産は漏れることがあり、名寄帳や登記事項証明書とあわせて、住所の変遷まで確認することが大切です。制度を上手に使いながら、相続登記まで確実に進めていきましょう。

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