ご家族が亡くなり、葬儀を終えてほっとする間もなく「相続手続きも進めなければ」と言われて、何から手をつければよいのか分からず戸惑っていませんか。相続手続きは、銀行・法務局・役所など進める先が多く、一度にすべてを終わらせようとすると、かえってどこから動けばよいか見えなくなりがちです。
大切なのは、はじめに「①遺言書」「②相続人」「③財産と負債」「④迫っている期限」の4つを確認することです。この4点がはっきりすると、次に何をすべきか、どの手続きを急ぐべきかが見えてきます。
このページでは、相続が始まったあとに最初に確認することから、相続放棄・相続税・相続登記といった期限のある手続き、必要書類、財産ごとの手続きの進め方までを、相続に初めて直面した方に向けてやさしく整理します。読み終えるころには、あなたが次にすべきことと、詳しく読むべきページが見えてくるはずです。
相続手続きの全体像をつかむ
相続手続きは、大きく分けると「確認 → 急ぐ判断 → 遺産分割 → 財産ごとの手続き」という流れで進みます。最初にこの全体像を頭に入れておくと、目の前の手続きが今どの段階なのかが分かり、次の一手で迷いにくくなります。
順番が大切なのには理由があります。相続では、先に決めておかないと次へ進めない場面が多いからです。たとえば、誰が相続人かを確定しないと遺産の分け方は決められませんし、財産と借金の全体像が分からないままでは、相続放棄をするかどうかも判断できません。全体像を持たずに銀行や法務局へ行くと、書類の不足で二度手間になりがちです。
まずは、次の4段階の地図を確認してください。それぞれの詳しい進め方は、このあとの章と各詳細ページで説明します。
まず確認する
遺言書・相続人・財産・負債の4点を確認し、相続の全体像をつかみます。
期限のある判断を見落とさない
相続放棄(原則3か月)・税務・相続登記など、期限のある手続きが自分に関係するかを確認します。
遺産分割の進め方を決める
誰がどの財産を引き継ぐかを、相続人・遺言・財産調査をふまえて決めます。
財産ごとの手続きへ進む
銀行・不動産・株式・生命保険・年金など、財産の種類ごとの手続きを進めます。
相続手続きで最初に確認する4つのこと
相続が始まったら、まず「①遺言書」「②相続人」「③財産と負債」「④迫っている期限」の4つを確認します。この4点がはっきりすると、あなたのケースで何を急ぐべきか、次にどのページを読めばよいかが見えてきます。
この確認を飛ばして個別の手続きから手をつけると、あとから相続人の範囲が変わったり、期限が過ぎていたりして、やり直しになることがあります。まず全体を確認してから個別の手続きへ進むのは、遠回りに見えて近道です。
4つのうち、遺言書と相続人は「誰が・どう分けるか」の土台になり、財産と負債は「そもそも相続してよいか」を判断する材料になります。期限は、これらの確認と並行して意識しておく必要があります。
①遺言書と②相続人を確認する
相続の進め方は、遺言書があるか、そして誰が相続人かで大きく変わります。この2つは遺産の分け方やそろえる書類の土台になるため、早い段階で確認しておくと、その後がスムーズです。
遺言書があるかを確認する
まず、故人が遺言書を残していないかを確認します。遺言書があれば、原則としてその内容にそって遺産を引き継ぐことになり、遺産分割の進め方や必要書類が変わってきます。まだ見つかっていない場合も、自宅の金庫や貸金庫、公証役場や法務局での保管の有無などを確認しておくと安心です。
⚠️遺言書は自己判断で開封しない
遺言書を見つけても、その場で開封したり処分したりしないでください。自筆で書かれた遺言書などは、家庭裁判所で検認という手続きが必要になる場合があり、勝手に開封すると過料(金銭的なペナルティ)の対象になることがあります。遺言書には自筆のもの・公正証書によるもの・法務局で保管されているものなどの種類があり、種類によってその後の進め方が異なります。まず種類を確かめることが先決です。
相続人が誰かを戸籍で確認する
次に、誰が相続人になるのかを確認します。相続人の範囲は法律で決まっており、家族の記憶や思い込みだけで決めることはできません。故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をたどると、家族が把握していなかった子どもがいるなど、想定と違う相続人が判明することもあります。
相続人を確定しないまま遺産分割や名義変更を進めると、あとで相続人が増えたときに手続きをやり直すことになりかねません。誰が相続人になるのか、法定相続人の範囲と順位は次のページで詳しく解説しています。
③財産だけでなく借金も調べる
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産(負債)も一緒に引き継ぎます。プラスとマイナスの両方を早めに把握することが、その後の判断の土台になります。
何を調べればよい?
相続財産の調査では、少なくとも次のようなものを確認します。手がかりは、故人あての郵便物や通帳に集まっていることが多いため、身近な書類から探すのがおすすめです。
- 預貯金(通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便物)
- 不動産(固定資産税の納税通知書・権利証・名寄帳)
- 株式・投資信託(証券会社からの取引残高報告書・配当金の通知)
- 生命保険(保険証券・保険会社からの案内)
- 年金(年金証書・年金関係の通知)
- 借入金・保証債務(ローンの契約書・クレジットカード・督促状)
通帳や郵便物は、財産の手がかりが集まる大切な資料です。捨てずにまとめておくと安心です。財産の具体的な調べ方は、次のページで解説しています。
借金がありそう・全体が分からないときは早めに確認する
「借金があるかもしれない」「財産の全体が分からない」という場合は、早めに動くことが特に大切です。このあと説明するように、相続放棄には原則3か月という期限があり、財産と負債の全体像がつかめないまま時間が過ぎると、選べる選択肢が狭まってしまうことがあるためです。
負債が多い、または全体が見えないケースでは、相続放棄や限定承認という方法を検討する余地があります。判断の前に、借入やクレジットの利用状況、保証人になっていないかなどを確認しておくことが大切です。相続放棄を検討する場合の詳しい流れは、次のページで解説しています。
相続放棄・限定承認を考えるなら「3か月」に注意する
借金の方が多そうなときや、財産の全体が分からないときは、相続放棄・限定承認には原則3か月という期限があることに注意が必要です。相続放棄は、自分のために相続が始まったことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所へ申述(申し立て)をする必要があります。限定承認(プラスの財産の範囲でのみ借金を引き継ぐ方法)も同じ3か月以内で、こちらは相続人全員でそろって行うのが原則です。
財産調査をしても判断材料がそろわない場合には、この期間を延ばす申立て(期間の伸長)ができることもあります。ただし、期限の起算点や延長の可否はケースによって異なります。借金があるか分からない段階で自己判断せず、早めに確認しておくと安心です。
「相続放棄」と「遺産分割で取り分をゼロにすること」は違う
ここで多くの方が誤解しやすいのが、遺産分割で「何も受け取らない」と決めることと、法律上の相続放棄は別のものだという点です。
✏️相続放棄と「取り分ゼロの遺産分割」の違い
| 項目 | 正式な相続放棄 | 取り分ゼロの遺産分割 |
|---|---|---|
| 手続き | 家庭裁判所へ申述・受理 | 相続人どうしの話し合い |
| 相続人の地位 | はじめから相続人でなかった扱い | 相続人のまま残る |
| 借金(負債) | 原則として引き継がない | 返済を求められる立場が残る |
| 期限 | 原則3か月以内 | 法律上の決まった期限はない |
遺産分割で取り分をゼロにしても、あなたは相続人のままです。そのため、故人に借金があれば、その返済を求められる立場は残ります。一方、家庭裁判所で正式に相続放棄が認められると、はじめから相続人でなかった扱いになり、原則としてプラスの財産もマイナスの借金も引き継ぎません。「借金を引き継ぎたくない」場合は、遺産分割ではなく相続放棄の手続きが必要になります。
④相続手続きの主な期限を時系列で見る
相続の手続きには、期限が決まっているものがあります。ただし、これらはすべての人に必ず当てはまる予定表ではなく、「自分に関係するか」を確認するための目安です。まずは全体像を押さえ、自分のケースに当てはまるものだけを意識すれば大丈夫です。
早めに|遺言・相続人・財産・負債の確認
すべての人に共通する最初のステップです。
原則3か月以内|相続放棄・限定承認
検討する場合。借金が多そう・全体が分からないときに関係します。
原則4か月以内|準確定申告
必要な場合。要否は税理士に確認します。
原則10か月以内|相続税の申告
必要な場合。すべての相続で必要になるわけではありません(税理士に確認)。
原則3年以内|相続登記の申請
不動産を相続した場合。2024年4月1日より前の相続で未登記の不動産は、原則2027年3月31日まで。
特に混同しやすいのが、3か月(相続放棄)・4か月(準確定申告)・10か月(相続税)・3年(相続登記)という期限です。これらは対象になる人がそれぞれ異なります。たとえば相続税は、一定の金額を超える遺産がある場合などに申告が必要になるもので、すべての相続で申告が必要になるわけではありません。申告が必要かどうかや税額の計算は、税理士に確認する必要があります。
不動産を相続した場合の相続登記は、2024年(令和6年)4月から申請が義務化され、原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前に開始した相続で、まだ登記していない不動産がある場合は、原則として2027年3月31日までに申請する必要があります。期限や起算点、遺産分割が成立した場合の扱いはケースによって異なることがあるため、詳しくは各ページで確認してください。
遺産分割と財産別の手続きを進める
相続人と財産の確認が終わったら、いよいよ誰がどの財産を引き継ぐかを決め、財産ごとの手続きへ進みます。ここからは、進める内容が具体的になります。
遺産分割で「誰が何を継ぐか」を決める
遺言書がない場合や、遺言書とは異なる分け方に相続人全員が合意する場合は、遺産分割協議で誰がどの財産を引き継ぐかを話し合って決めます。相続人が1人であれば協議は不要ですが、複数いる場合は全員の合意が必要です。
合意した内容は、遺産分割協議書という書面にまとめます。この書面は、不動産の名義変更や銀行口座の解約など、その後の手続きで繰り返し使う大切な書類になります。遺産分割の進め方や協議書の作り方は、次のページで詳しく解説しています。
財産別の手続き先を確認する
遺産分割で引き継ぐ人が決まっても、そこで手続きが終わるわけではありません。銀行・法務局・証券会社・保険会社・年金の窓口などで、それぞれ別の手続きが必要になることがあります。財産の種類ごとに、次のカードから手続きの流れを確認してください。