親が亡くなり、相続手続きを進めようとしたとき、多くの方が最初に感じるのが「何の書類を、どこで集めればいいかわからない」という戸惑いです。
相続手続きに必要な書類は、手続きの種類によって異なります。不動産の名義変更(相続登記)、銀行口座の解約、相続税の申告、相続放棄――それぞれで必要な書類が違うため、「とりあえず全部集めよう」とすると、余計な手間と時間がかかってしまいます。
このページでは、相続手続きに必要な書類を「共通書類」と「手続き別書類」に整理し、取得先とあわせてわかりやすく解説します。海外在住の相続人がいる場合に必要な書類についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
必要書類は「共通書類」と「手続き別書類」の2種類
相続手続きに必要な書類は、大きく2種類に分けられます。
- 共通書類:どの手続きにも共通して必要な書類(戸籍謄本・印鑑登録証明書など)
- 手続き別書類:相続登記・銀行手続き・相続税申告・相続放棄など、手続きごとに追加で必要な書類
まず共通書類を揃えたうえで、ご自身が行う手続きに応じた書類を追加収集するのが効率的です。
まず全員が必要な「共通書類」とは
相続が発生したら、ほぼすべての手続きで共通して必要になる書類があります。先にこれらを揃えておくことで、各手続きをスムーズに進めることができます。
| 書類 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡) | 市区町村役場 | 改製原戸籍・除籍謄本を含む。広域交付制度で一か所にまとめて請求可 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 | 現在の戸籍謄本 |
| 相続人全員の印鑑登録証明書 | 市区町村役場 | 発行から3〜6ヶ月以内のものが必要な場合が多い |
| 遺産分割協議書 | 相続人間で作成 | 相続人が複数いる場合。全員の実印押印が必要 |
| 固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 不動産がある場合に必要 |
戸籍謄本はなぜ複数通必要になるのか
複数の戸籍が必要になる理由は、相続人を正確に特定するためです。
相続手続きでは、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍を揃える必要があります。これは、婚姻・離婚・転籍・戸籍の改製(コンピュータ化)などにより、1人の人物の戸籍記録が複数の書類に分散しているためです。改製前の古い戸籍(改製原戸籍)も含めて遡る必要があり、書類の数は多くなります。認知された子や婚外子がいないかの確認も、この被相続人の戸籍で行います。
また、相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。相続人それぞれの氏名・生年月日・続柄を確認するために使用します。
被相続人に複数回の婚姻歴・転籍歴がある場合、戸籍を遡るのに手間がかかります。本籍地が遠方にある場合は特に負担が大きくなります。
印鑑登録証明書と遺産分割協議書
相続人が複数いる場合、遺産の分け方を相続人全員で話し合い、合意内容を書面にまとめたものが遺産分割協議書です。この協議書に相続人全員が実印で押印し、その実印の正当性を証明するために印鑑登録証明書が必要になります。
印鑑登録証明書は相続人全員分を用意します。発行から3〜6ヶ月以内のものを求められることが多いため、手続きの直前に取得するのが一般的です。
固定資産税評価証明書
相続財産に不動産(土地・建物)が含まれる場合は、固定資産税評価証明書が必要です。相続登記の際に登録免許税の計算に使用します。不動産の所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所)で取得できます。
法定相続情報証明制度とは
戸籍謄本をすべて揃えたあと、法務局に申請することで法定相続情報一覧図の交付を受けられます。これを使うと、銀行・税務署など各機関への手続きで、戸籍書類の束を何度も提出する必要がなくなります。
法定相続情報証明制度のポイント
- 戸籍収集の手間は省けない(まず全戸籍を揃える必要がある)
- 全戸籍を揃えたうえで法務局に申請→一覧図が無料で交付される
- 以降の手続きで戸籍の束を何度も提出せずに済む
- 複数の手続きを同時並行で進める場合に特に有効
相続人が海外にいる場合に必要な書類
相続人の中に海外在住者がいる場合、日本国内の手続きとは別の書類が必要になります。国籍によって必要な書類が異なる点に注意が必要です。
日本国籍の場合(在留証明書・署名証明書)
海外在住の日本国籍の相続人には、印鑑登録証明書の代わりに以下の書類が必要です。
- 在留証明書:現在の居住地を証明する書類。在外公館(日本大使館・領事館)で取得
- 署名証明書:実印の押印に代わるサインの証明書類。在外公館で取得
どちらも日本大使館・領事館での申請が必要なため、居住地によっては移動が必要になることもあります。取得に時間がかかる場合もあるため、早めに手配することをお勧めします。
外国籍の場合(宣誓供述書など)
外国籍の相続人に必要な書類は、相手国の制度や手続きの内容によって異なります。「宣誓供述書が必要ですよね」とお問い合わせをいただくことがありますが、必ずしも宣誓供述書とは限りません。相手国ごとの実務や、手続きの種類によって求められる書類は変わります。
当事務所では海外在住の相続人が関わる案件を多数取り扱っています。どの書類が必要かわからない場合はお気軽にご相談ください。
【手続き別】必要書類一覧
共通書類に加えて、手続きごとに必要な書類をまとめました。ご自身が行う手続きを確認してください。
| 手続き | 窓口 | 期限 | 追加で必要な主な書類 |
|---|---|---|---|
| 相続登記 | 法務局 | 3年以内(義務) | 固定資産税評価証明書、相続登記申請書 |
| 銀行口座の解約・払戻 | 各金融機関 | 期限なし | 各金融機関の所定様式、通帳・キャッシュカード、代表相続人の本人確認書類 |
| 相続税の申告 | 税務署 | 10ヶ月以内 | 相続税申告書、残高証明書、保険・退職金関係書類 |
| 相続放棄 | 家庭裁判所 | 3ヶ月以内 | 相続放棄申述書、被相続人との関係がわかる戸籍のみ(出生〜死亡の全戸籍は原則不要) |
不動産の相続登記(法務局)
不動産の名義変更(相続登記)では、共通書類に加えて以下が必要です。2024年4月から相続登記が義務化されており、相続発生から3年以内に申請しなければなりません。
- 固定資産税評価証明書(不動産の所在地の市区町村が発行)
- 相続登記申請書(自分で作成、または司法書士に依頼)
銀行口座の解約・払戻(金融機関)
銀行によって所定の書類が異なります。事前に各金融機関へ確認するか、まとめて一度相談するのが効率的です。一般的に必要なものは以下のとおりです。
- 各金融機関の相続手続依頼書(各銀行の所定様式)
- 通帳・キャッシュカード(紛失の場合は申告)
- 相続人代表者の本人確認書類
法定相続情報一覧図があれば、複数の金融機関への手続きを並行して進める際に戸籍の束を繰り返し提出せずに済みます。
相続税の申告(税務署)
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。相続発生から10ヶ月以内に申告と納税を行います。
- 相続税申告書(税理士と協力して作成)
- 不動産の登記事項証明書・固定資産税評価証明書
- 預貯金の残高証明書(相続開始日時点)
- 生命保険・退職金関連書類
相続税申告が必要なケースでは、登記手続きを担当する司法書士と税理士が連携して書類収集を進めることがあります。当事務所でも税理士と協力しながらサポートしています。
相続放棄(家庭裁判所)
相続放棄は、相続発生を知った日から原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。他の手続きと比べて必要な戸籍が限定的な点が特徴です。
- 相続放棄申述書(家庭裁判所の書式)
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 申述人と被相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 申述人の住民票
相続登記や銀行手続きのように「出生から死亡まで全て」の戸籍は原則不要です。ただし、先順位の相続人全員が放棄して次の順位に相続権が移った場合など、状況によって追加書類が求められることがあります。
戸籍謄本はどこで取得できるのか?
広域交付制度で一か所にまとめて請求できる
2024年3月から始まった戸籍の広域交付制度により、本籍地が異なる複数の市区町村の戸籍を、お近くの1か所の市区町村窓口でまとめて請求できるようになりました。以前は本籍地ごとに申請が必要でしたが、この制度により手続きの手間が軽減されています。
なお、郵送請求やコンビニ交付には対応していません(2026年3月現在)。窓口での申請が必要です。
相続関係が複雑な場合は専門家への依頼を検討
被相続人の婚姻歴が複数ある、養子縁組がある、転籍を繰り返しているといった場合は、必要な戸籍を漏れなく収集するのが難しくなります。どこまで遡ればよいか判断がつかない場合は、司法書士への依頼をご検討ください。
自分で集められる?専門家に頼むべき?
相続関係がシンプルであれば、自分で書類を集めることは不可能ではありません。ただし、以下のようなケースでは専門家へのご相談をお勧めします。
- 相続人が多い、または相続関係が複雑(再婚・養子縁組あり)
- 海外在住の相続人がいる
- 不動産が複数ある、または複数の都道府県にまたがっている
- 相続税の申告が必要
- 相続人の中に認知症の方・未成年者がいる
- 期限(相続放棄3ヶ月・相続税10ヶ月)が迫っている
書類の収集から相続登記や銀行の相続手続きまで一括してサポートできるのが司法書士の役割です。複数の手続きを並行して進める場合、専門家に依頼することで時間と手間を大幅に節約できます。
当事務所に依頼した場合の流れ
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1
ご相談・ヒアリング
相続財産の内容・相続人の状況・お急ぎの事情などをお聞きします。電話・メール・オンラインでも対応しています。
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2
必要書類の確認・収集
手続きの内容に応じて必要な書類を整理します。戸籍の収集・取り寄せも代行します。
-
3
書類の作成・申請
登記申請書・遺産分割協議書などを作成し、法務局・金融機関・家庭裁判所等へ申請します。
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4
完了・ご報告
手続き完了後、登記識別情報などの書類をお渡しします。
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