遺言書は、書き上げた時点ではまだ半分しか終わっていません。亡くなった後にご家族が見つけられなければ、どれだけ丁寧に書いた遺言書でも、そのとおりに実現されないからです。
自宅の引き出しや金庫に入れておくのが一番安心に思えるかもしれませんが、見つけてもらえなかったり、先に中身を知った相続人が隠してしまったりする心配が残ります。2020年7月からは、法務局が自筆証書遺言を預かる制度も始まりました。
このページでは、自宅・法務局・公証役場という保管先ごとの違い、法務局の保管制度を使うときの費用・必要書類・予約の流れ、そして亡くなった後にご家族が遺言書を探す方法までをまとめて説明します。
遺言書は「書いて終わり」ではなく、見つかる場所に置く
遺言書は、亡くなった後にご家族が見つけて初めて意味を持ちます。書いた事実を誰も知らなければ、相続人が集まって分け方を話し合い、そのまま手続きが終わってしまうこともあります。
後から遺言書が出てきた場合、その内容と食い違う部分については、いったん決めた分け方をやり直すことになります。済ませたはずの不動産の名義変更や預貯金の解約まで巻き戻すことになれば、ご家族の負担は大きくなります。
反対に、遺産に利害のある相続人が先に見つけてしまう場面も問題です。遺言書を隠したり捨てたりした人は相続人になれないと定められていますが民法第891条第5号、隠されたこと自体が表に出なければ、ほかの相続人がそれを知る手立てはありません。
保管先を選ぶときは、確実に見つけてもらえるか、そして利害のある人に勝手に触られないか、この2点で比べてください。
遺言書の主な保管方法
自筆証書遺言の保管先には、自宅・法務局・専門家に預けるという選択肢があります。公正証書遺言を選んだ場合、原本は公証役場が保管しますが、手元には作成時に交付された正本と謄本が残ります。この正本・謄本をどこに置いておくかは、やはり考える必要があります。
✏️保管先ごとの違い
| 保管先 | 費用 | 見つけてもらう仕組み | 紛失・改ざん | 検認 |
|---|---|---|---|---|
| 自宅で保管する | かからない | 家族に伝えておくしかない | 心配が残る | 必要 |
| 法務局に預ける (自筆証書遺言書保管制度) |
3,900円 | 希望すれば、指定した方へ通知が届く | 心配なし | 不要 |
| 専門家に預ける | 事務所による | 預かった専門家が動く | 小さい | 必要 |
| 公正証書遺言にする (公証役場が原本を保管) |
公証人手数料 (保管に別途費用なし) |
家族が公証役場で検索すれば分かる | 心配なし | 不要 |
費用だけを見れば自宅保管が有利ですが、確実さでは法務局と公証役場が上回ります。3,900円で紛失・改ざんの心配と検認の手間の両方をなくせる点で、法務局の保管制度は費用対効果の高い選択肢です。
ただし、公証役場に原本があるからといって、放っておいても見つかるわけではありません。公正証書遺言を作ったことをご家族が知らなければ、遺言があると気づかれないまま遺産分割が終わってしまうことがあります。全国の公証役場で遺言を検索できる仕組みはありますが、ご家族が「遺言があるかもしれない」と考えて調べなければ、その仕組みは使われません。作ったことと、正本・謄本の置き場所は、信頼できる方に伝えておいてください。
専門家に預ける方法は、遺言執行者を専門家に指定する場合と組み合わせると意味があります。亡くなった後に動く人が遺言書を持っている状態になるためです。ただし、預かった専門家が遺言者の亡くなったことを知らなければ、遺言書は預かられたまま動きません。預けるときは、ご家族に連絡先を伝えておく必要があります。検認も必要なままです。
どの保管先を選んでも、遺言者が亡くなったことが誰かに伝わらなければ、遺言書は動き出しません。自宅に置いても、専門家に預けても、公証役場に原本があっても、ご家族が動かなければそのままです。この点で性質が違うのが法務局の保管制度です。戸籍を扱う部署との連携で亡くなったことが確認されると、あらかじめ指定しておいた方(3名まで)へ通知が届くため、ご家族からの連絡を待たずに遺言書があることが伝わります。
自宅保管のメリット・注意点
自宅で保管する利点は、費用がかからず、思い立ったときに書き直せることです。誰にも知られずに置いておけるため、内容を秘密にしておきたい場合にも向いています。
その代わり、次のような弱点が残ります。
- 見つけてもらえない:置き場所を誰にも伝えていなければ、遺品整理のときに見落とされます。書類の束に紛れたまま処分されてしまうこともあります。
- 見つけた人が処分できてしまう:自分に不利な内容を先に見た相続人が、隠したり捨てたりする可能性を排除できません。
- 災害や紛失で失われる:火災や水害で失われれば、書き直すことはできません。
- 検認が必要になる:亡くなった後、ご家族が家庭裁判所に検認を申し立てることになります。戸籍を集める手間がかかるうえ、申立てから検認の日までにも一定の期間を要します(当事務所が扱った案件では、おおむね1か月から2か月程度でした)。
貸金庫は保管場所に向かない
貸金庫なら安全だと考えて遺言書を入れる方がいますが、この方法は避けてください。相続が起きた後に貸金庫を開けるには、金融機関から相続人全員の同意書や戸籍一式を求められます。遺言書を取り出すだけで、相続人全員に連絡を取って書類をそろえる作業が必要になります。
遺言書は、相続人が集まって話し合いを始める前に読んでもらうためのものです。開けるのに全員の協力がいる場所に入れてしまうと、順番が逆になります。
封をするかどうか
自筆証書遺言に封をするかどうかは自由で、封をしなくても効力に影響しません。ただし封印をした遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとでなければ開封できません民法第1004条第3項。ご家族が中身を確かめられないまま検認を待つことになるため、急ぎの手続きがある場合は不便です。
なお、法務局の保管制度を使う場合は封筒に入れず、そのままの状態で持参します。
置き場所は誰に伝えるか
自宅で保管するなら、置き場所を伝えておかなければ意味がありません。伝える相手として確実なのは、遺言執行者に指定した方です。亡くなった後に遺言の内容を実行する立場なので、遺言書のありかを知っている必要があります。
遺言執行者を決めていない場合、遺言の内容で不利になる相続人にだけ伝える形は避けてください。複数のご家族に伝わる状態にしておくほうが、後から「隠されたのではないか」という疑いも生まれにくくなります。
ただし、伝えた相手がご自身より先に亡くなることもあります。伝えた相手に頼りきらない形にしたいなら、法務局の保管制度が選択肢になります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度とは
自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局に預けられる制度です。2020年7月10日に始まりました法務局における遺言書の保管等に関する法律。遺言書を預かる法務局は遺言書保管所と呼ばれ、全国の法務局・地方法務局とその支局などが指定されています。
預けた遺言書は、原本を遺言者が亡くなってから50年間、画像データを150年間、法務局が保管します。自宅に置いておく場合に残る紛失・破棄・改ざんの心配は、これでなくなります。
変わるのは保管の安全性だけではありません。
- 亡くなった後の検認が不要になる
- 預けるときに、様式を満たしているかどうかの確認を受けられる
- 希望すれば、亡くなったときに指定した方(3名まで)へ通知が届く
- 相続人などが、全国どこの法務局でも内容を確認できる
検認が不要になる
法務局に預けた遺言書について、家庭裁判所の検認は必要ありません遺言書保管法第11条。ご家族は、法務局に遺言書情報証明書を請求し、それを遺言書の原本の代わりに使って不動産の名義変更や預貯金の解約に進めます。
検認を受ける場合、申立てをすると家庭裁判所が相続人全員に検認の日を通知し、その日に立ち会って手続きを行います。申立てから検認の日までには一定の期間を要するため(当事務所の経験ではおおむね1か月から2か月程度)、この期間をご家族に負わせずに済む点が大きな違いです。遺言書情報証明書は郵送でも請求できます。
ただし、相続人を確認するための戸籍などをそろえる必要がある点は、検認と大きくは変わりません。
様式は確認してもらえるが、内容の有効性までは保証されない
預けるとき、遺言書保管官が民法の定める自筆証書遺言の形式に適合しているかを外形的に確認します。日付や氏名の記載、押印の有無といった点がここでチェックされるため、押印を忘れたまま預けてしまうことは起こりません。
ただし、確認されるのは形式だけです。法務省も、この制度は保管された遺言書の有効性を保証するものではないと明記しています。遺言書保管所は内容についての相談に応じることもできません。
たとえば「自宅は長女に相続させる」とだけ書いた遺言書でも、様式さえ整っていれば預かってもらえます。しかし、その自宅がどこの不動産を指すのか読み取れなければ、名義変更の手続きはできません。預けられたことは、書いたとおりに実行できることを意味しません。
亡くなったときに通知が届く
この制度には2種類の通知があります。性質が違うので分けて理解してください。
✏️2種類の通知
| 通知の種類 | いつ届くか | 誰に届くか | 事前の手続き |
|---|---|---|---|
| 指定者通知 | 戸籍を扱う部署との連携で、法務局が死亡を確認したとき | 遺言者が指定した方(3名まで) | 保管を申請するときに希望する必要がある |
| 関係遺言書保管通知 | 相続人などの誰か1人が閲覧や証明書の交付を受けたとき | ほかの相続人・受遺者・遺言執行者の全員 | 不要(自動で行われる) |
2つのうち、遺言書があること自体をご家族に気づかせる働きをするのは指定者通知のほうです。関係遺言書保管通知は、相続人などの誰か1人が動いた後に残りの方へ届くものなので、誰も動かなければ通知は出ません。
ただし、指定者通知に頼りきるのは避けてください。法務局が亡くなったことを把握するのは戸籍を扱う部署との連携によるもので、亡くなってから通知が届くまでにどのくらいかかるかは公表されていません。相続手続きには期限のあるものもあるため、通知を待つ前提で考えないほうが安全です。
法務省も、遺言書を預けたことをご家族に伝えておくことを推奨しています。手続きの最後に受け取る保管証には、預けた遺言書保管所の名称と保管番号が記載されています。この保管証の写しをご家族に渡しておけば、通知を待たなくても遺言書のありかが確実に伝わります。保管証は再発行されないため、原本の管理にはご注意ください。
保管制度の申請に必要なもの・費用・予約
申請できるのは遺言者本人だけで、代理人による申請も郵送での申請もできません遺言書保管法第4条第6項。予約を取ったうえで、遺言書と必要書類を持って窓口へ行く流れになります。
✏️保管を申請するまでの流れ
当日に持っていくもの
- 遺言書:ホチキスで綴じず、封筒にも入れず、ばらばらの状態で持参します。スキャナで読み取るためです。
- 保管申請書:事前に記入したもの。
- 住民票の写し:本籍と筆頭者の記載があり、マイナンバーと住民票コードの記載がないもの。原本を提出します。返してほしい場合は、あわせてコピーを出せば原本が戻ります。
- 顔写真付きの身分証明書:運転免許証やマイナンバーカードなど。本人確認のため必須で、これがないと手続きできません。
- 手数料3,900円:収入印紙で納めます。
遺言書を外国語で書いた場合は、日本語の翻訳文もあわせて提出します。
様式のルールでつまずきやすい点
すでに書き上げた遺言書をそのまま持ち込んで、様式に合わずに預けられないという例があります。とくに余白は見落としやすい点です。
用紙の上5mm・下10mm・左20mm・右5mmは、必ず余白として空けます。ページ番号を含め、この余白に1文字でもはみ出していると預かってもらえず、書き直しになります。ページ番号も余白の内側に書いてください。
そのほか、次の点も守る必要があります。
- 用紙はA4サイズ。文字が読みにくくなる地紋や彩色のないもの(一般的な罫線は問題ありません)
- 片面のみに記載する。裏面には何も書かない
- 複数ページになる場合は「1/2」のように総ページ数が分かる形でページ番号を書く
- ボールペンや万年筆など、消えにくい筆記具を使う
- 氏名は戸籍どおりに書く。ペンネームでは預かってもらえない
これから遺言書を書く方は、最初からこの様式に合わせておくと二度手間になりません。
手数料の一覧
手数料はすべて収入印紙で納めます。保管の申請は預ける年数に関係なく、申請のときの3,900円だけです。
✏️遺言書保管制度の手数料
| 手続き | 誰が | 手数料 |
|---|---|---|
| 遺言書の保管の申請 | 遺言者 | 1件につき3,900円 |
| 遺言書の閲覧(モニター) | 遺言者・相続人等 | 1回につき1,400円 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 遺言者・相続人等 | 1回につき1,700円 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 相続人等 | 1通につき1,400円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 相続人等 | 1通につき800円 |
| 保管の申請の撤回 | 遺言者 | かからない |
| 住所・氏名などの変更の届出 | 遺言者 | かからない |
引っ越しをしたときの住所変更の届出に手数料はかかりません。届出をしないままだと、亡くなった後にご家族が手続きしにくくなったり、通知が届かなかったりすることがあります。住所や本籍が変わったら、そのつど届け出てください。この届出は郵送でもできます。
遺言書の内容を書き直したいときは、保管の申請を撤回して遺言書を返してもらい、新しく書いたうえであらためて預ける形になります。撤回に手数料はかかりませんが、預け直すときには3,900円が再びかかります。
公正証書遺言はどこに保管される?
公正証書遺言の原本は、作成した公証役場が保管します。紛失や改ざんの心配はなく、亡くなった後の検認も必要ありません。
ただし、手元に何も残らないわけではありません。作成のときに正本1通と謄本1通の交付を受けるのが通常で、相続開始後の手続きは、この手元にある正本・謄本を使って進めます。亡くなった後にあらためて公証役場で写しを請求する必要はありません。
公正証書遺言を選んでも、正本・謄本をどこに置いておくかという問題は残ります。ここを自宅の引き出しに入れたまま誰にも伝えなければ、自筆証書遺言を自宅保管した場合と同じことが起こります。
原本は長期間保管されます。公証人法施行規則は公正証書の保存期間を20年と定めていますが、遺言公正証書は保存を要する特別の事由にあたるものとして、遺言者の死亡後50年、作成から140年、または遺言者の生後170年という長期の取扱いがされています。作成から何十年経っていても、原本が失われている心配はほとんどありません。
作ったことを伝えていないと見つからない
公正証書遺言には、法務局の保管制度のような通知の仕組みがありません。公証役場から、亡くなったことを把握してご家族に知らせてくれることはありません。
1989年(平成元年)以降に作成された遺言公正証書であれば、遺言者が亡くなった後、相続人などの利害関係人が全国どこの公証役場からでも照会できます。ただしこれは、ご家族が「遺言があるかもしれない」と考えて調べたときに機能する仕組みです。誰も思い当たらなければ、原本が公証役場にあっても、そのまま遺産分割が進んでしまいます。
公正証書遺言を作ったら、次の2つは伝えておいてください。
- 公正証書遺言を作ったという事実:内容まで伝える必要はありません。作ったことと、作成した公証役場の名前が分かれば十分です。
- 正本・謄本の置き場所:遺言執行者を指定しているなら、その方に正本を預けておく方法もあります。
正本・謄本をなくしてしまった場合でも、原本は公証役場にあるため、あらためて謄本の交付を請求できます。手元の書類が失われても遺言そのものが失われるわけではない点は、自筆証書遺言との大きな違いです。
保管制度を使うと検認は本当に不要?
不要です。ただし、ご家族が何もしなくてよくなるわけではありません。検認の代わりに、法務局へ遺言書情報証明書を請求する手続きが必要になります。
✏️検認の要否
| 遺言書の種類・保管の状況 | 検認 |
|---|---|
| 自宅などで保管していた自筆証書遺言 | 必要 |
| 法務局に預けた自筆証書遺言 | 不要 |
| 公正証書遺言 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 必要 |
秘密証書遺言は法務局の保管制度を利用できないため、自宅保管の自筆証書遺言と同じく検認が必要です。
検認の代わりに何をするのか
法務局に預けた遺言書は、相続人であっても返してもらえません。内容を確かめて手続きに使うには、遺言書情報証明書の交付を請求することになります。検認と並べると、次のような違いがあります。
✏️検認と遺言書情報証明書の請求
| 検認 (自宅保管の自筆証書遺言) |
遺言書情報証明書の請求 (保管制度を使った場合) |
|
|---|---|---|
| 手続き先 | 亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所 | 全国どこの法務局でも可 |
| 出向く必要 | 検認の日に立ち会う | 郵送で請求できる |
| かかる期間 | 申立てから1〜2か月程度(目安) | 請求後の審査を経て交付 |
| 費用 | 収入印紙800円+郵便切手 検認済証明書150円 |
1通につき1,400円 |
| 必要な戸籍 | 遺言者の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の戸籍 | ほぼ同じ書類が必要 |
戸籍をそろえる手間は、どちらを選んでもほとんど変わりません。大きく違うのは、家庭裁判所の期日を待つかどうかです。検認は、申し立ててから相続人全員に日程が通知され、その日に立ち会って行われます。当事務所が扱った案件では、申立てから検認の日までおおむね1か月から2か月かかっており、この期間は不動産の名義変更も預貯金の解約も進められません。
ほかの相続人にも通知が届く
相続人などの1人が遺言書情報証明書の交付を受けると、ほかの相続人・受遺者・遺言執行者の全員に、遺言書が保管されている旨の通知が届きます。これは自動的に行われるもので、止めることはできません。
ほかのご家族に知らせないまま手続きを進めることはできない仕組みです。これは検認も同じで、申立てをすれば相続人全員に検認の日が通知されます。遺言書がある以上、その存在は相続人全員に伝わるものと考えてください。
亡くなった後、遺言書があるかどうかはどう確認する?
自宅を探し、公証役場と法務局に照会すれば、遺言書があるかどうかはほぼ確認できます。公正証書遺言は公証役場、法務局に預けられた自筆証書遺言は法務局と、調べる先が分かれています。どちらか一方を調べただけでは、確認したことになりません。
いずれの照会も、遺言者が亡くなった後でなければできません。生前に、ご家族が「親が遺言を書いているか」を調べることはできない仕組みです。
まず自宅を探す
自筆証書遺言を自宅で保管していた場合、遺言書はご自宅のどこかにあります。次のような場所を確認してください。
- 仏壇・神棚のまわり
- 金庫、鍵のかかる引き出し
- 不動産の権利証や通帳、保険証券をまとめてある書類箱
- 本棚や書斎の書類の間
貸金庫を借りていた場合、その中に入っていることもあります。ただし相続開始後に貸金庫を開けるには、金融機関から相続人全員の同意書や戸籍一式を求められるため、確認までに時間がかかります。
また、生前に付き合いのあった専門家や、遺言執行者に指定されていそうな方が預かっている場合もあります。心当たりがあれば、連絡してみてください。
公証役場に照会する(公正証書遺言)
1989年(平成元年)以降に作成された遺言公正証書であれば、全国どこの公証役場からでも、その方が公正証書遺言を作っていたかどうかを調べられます。作成した公証役場が遠方でも、最寄りの公証役場で照会できます。
照会できるのは、相続人などの利害関係人に限られます。持っていくものは次のとおりです。
- 亡くなったことが分かる戸籍謄本(除籍謄本)
- 請求する方が相続人であることが分かる戸籍謄本
- 顔写真付きの身分証明書
照会自体に手数料はかかりません。遺言があると分かり、その謄本の交付を受ける場合は、別途手数料が必要です。
法務局に照会する(保管制度を使った自筆証書遺言)
法務局に預けられた自筆証書遺言があるかどうかは、遺言書保管事実証明書を請求すれば分かります。1通800円で、全国どこの法務局でも請求でき、郵送でも手続きできます。
保管されていることが分かったら、次に遺言書情報証明書(1通1,400円)を請求して内容を確認します。いきなり内容の証明書を請求するより、先に800円の事実証明書で有無を確かめるほうが無駄がありません。
事実証明書の結果は、請求した方の立場によって意味が変わります。相続人が請求して「保管されていない」と出た場合は、その方が法務局に遺言書を一切預けていないという意味になります。一方、相続人以外の方(受遺者や遺言執行者として指定されたと思われる方)が請求して「保管されていない」と出ても、その方を受取人とする遺言書がないというだけで、ほかの内容の遺言書が預けられている可能性は残ります。
遺言書が見つかったら
自宅で見つけた自筆証書遺言は、開封せずに家庭裁判所へ提出して検認を受けてください。封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封した場合、5万円以下の過料の対象になります民法第1005条。
遺産分割の話し合いを始めてしまった後に遺言書が出てきた場合も、そのまま進めずにいったん止めてください。遺言の内容と食い違う部分については、決めた内容をやり直すことになります。
よくある質問
- 法務局に預けた遺言書を、生前に家族が見ることはできますか?
- できません。遺言者が生きているあいだに閲覧を請求できるのは、遺言者ご本人だけです。ご家族が閲覧や証明書の交付を請求できるのは、遺言者が亡くなった後に限られます。預けた内容をご家族に知らせておきたい場合は、預ける前にコピーを取っておき、それを渡しておく方法があります。内容までは知らせたくない場合でも、保管証の写しを渡しておけば、遺言書を預けたという事実と保管番号は伝わります。
- 体が不自由で法務局に行けません。代理人や郵送で申請できませんか?
- できません。保管の申請は遺言者ご本人が法務局へ出向いて行う決まりで、代理人による申請も郵送での申請も認められていません。介助のために付添いの方が同行することは問題ありません。どうしても出向けない場合、この制度は利用できないため、ご自宅などでご自身で保管するか、公正証書遺言を検討することになります。公正証書遺言であれば、公証人がご自宅や病院、介護施設に出張して作成できます。
- 引っ越しをしたら、何か手続きが必要ですか?
- 変更の届出が必要です。住所・本籍・氏名が変わったときは法務局に届け出てください。手数料はかからず、郵送でも手続きできます。届出をしないままだと、亡くなった後にご家族が証明書を請求しにくくなったり、指定した方への通知が届かなかったりすることがあります。受遺者や遺言執行者、通知の対象として指定した方の住所などが変わったときも、同じく届出の対象です。
- 相続人が、法務局から遺言書の原本を返してもらうことはできますか?
- できません。法務局に預けられた遺言書は、遺言者ご本人が生前に保管の申請を撤回した場合を除いて返還されず、相続人であっても同じです。内容を確認して手続きに使うには、遺言書情報証明書の交付を請求してください。この証明書は遺言書の画像がそのまま印刷されたもので、遺言書の原本の代わりに、不動産の名義変更や預貯金の解約に使えます。
- 保管証をなくしてしまいました。どうなりますか?
- 保管証は再発行されませんが、なくしても手続きはできます。保管証には遺言書を預けた法務局の名称と保管番号が記載されており、これがあると相続開始後の手続きが早く進みます。手元にない場合でも、遺言者の氏名や生年月日などから遺言書を特定できるため、証明書の請求や閲覧はできます。ご家族に預けたことを伝える手段としても使えるので、写しを渡しておくと確実です。
まとめ|遺言書は「見つかる状態」にして残す
遺言書は、亡くなった後に見つかって初めて働きます。どれだけ内容を練っても、見つけてもらえなければ、書かなかったのと同じ結果になります。
自宅で保管する方法は費用がかからない代わりに、見つけてもらえない、処分される、災害で失われるという弱点が残ります。法務局の保管制度なら、3,900円で紛失・改ざんの心配がなくなり、亡くなった後の検認も不要になります。公正証書遺言であれば、原本を公証役場が長期間保管します。
ただし、どの方法を選んでも共通する落とし穴があります。遺言書があること自体が伝わらなければ、遺言書は動き出しません。法務局に預けるなら保管証の写しを、公正証書遺言なら作った事実と正本・謄本の置き場所を、信頼できる方に伝えておいてください。
ご家族が亡くなって遺言書を探す側になった場合は、自宅・公証役場・法務局の3か所を確認します。公証役場での照会に手数料はかからず、法務局の遺言書保管事実証明書は1通800円です。
遺言書の保管と、その後の手続きについて
遺言書を書いた後、どこに保管すればよいか迷っている段階からご相談いただけます。法務局に預けるための保管申請書の作成もお引き受けしています。ご家族が亡くなって遺言書を探している段階、見つかった遺言書で手続きを進める段階も同じです。司法書士事務所神戸リーガルパートナーズでは、家庭裁判所への検認の申立て、遺言書情報証明書の請求、その後の不動産の名義変更や預貯金の解約まで続けてお手伝いしています。お電話・メール・LINEからお問い合わせください。
遠方の方・外出が難しい方はオンラインでのご相談も可能です
